地方内科医の日日是好日

地方中規模病院内科医の日々の診療記録

2023-01-01から1年間の記事一覧

20231228:味覚障害

65歳男性、冬以外はアメリカの北の方に在住。内科的な既往なし。1年ほど前から徐々に味覚を感じなくなった。それが続くため、日本に帰国中に受診。 コロナ罹患なし 亜鉛75μg/dL、その他一般血算・生化・炎症・鉄など異常なし マネジメントは? -------------…

20231226:尿路感染症で〇〇する??

88歳女性。視床出血、塞栓性脳梗塞後で要介護4、尿道カテーテル留置されている方。受診前日からの発熱で受診。診察、検査から熱源として尿路感染症が疑われた。 尿検査はpH6.5、白血球>100/HPF、細菌3+であった。尿Gram染色では下記のような所見であった。 …

20231224:学生向け臨床推論セミナー 集団的営為

ボスにお誘いいただき、中部地方の某国立大学医学部4年生に臨床推論セミナーという形で講義をさせていただきました。 4年生相手でしたが、とても勉強されていて、かつ議論に慣れていて、こちらも勉強になることがたくさんありました。 それではセミナーの振…

20231116:射精時痛

80歳男性。前立腺肥大症で泌尿器かかりつけ。GERD症状で私の内科外来に通院中。 いつもの定期外来でふと「射精の時に痛みがあって困ってます。泌尿器科では専門でないと言われました。」と相談してくれました。ひとまず尿検査やPSAなど評価しつつ、セルニル…

20231107:高齢女性の尿閉

80歳女性、アルツハイマー型認知症あり、受診当日から不穏になり受診。原因を調べていても、診察、血液検査、心電図、頭部CTではっきりしない。。 とりあえず入院で経過観察目的に入院。 次の日、病棟Nsからコールあり。「先生、患者さん昨日から排尿がない…

20231029:Streptococcus Gallolyticus (Bovis) Group 

95歳男性、要介護5、施設入所中。先日からの発熱で受診。コロナ陽性、右肺にどちらかというと細菌性様の肺炎像あり。レムデシビル、CTRXの投与を開始し入院。翌日に血液培養好気ボトル2setからグラム陽性連鎖球菌が生えたと報告あり。第3病日に菌種が判明し…

20231027:連鎖球菌のIEリスク

85歳女性、要介護2、施設入所をされている方。受診前日からの発熱で受診。診察すると背部に発赤あり。蜂窩織炎として診断した。 (自分は蜂窩織炎でも血液培養をとるように育てられてきたので)血液培養を採取し、家族や施設の希望もあり、全身状態を鑑みつ…

20231024:NEJM レビュー SIAD

(本文症例) 85歳の男性。定期診察で血清Na128mmol/L。若干ぼーっとして、歩容が不安定であった。既往歴は原発性高血圧、前立腺肥大症。服用薬はアムロジピン、フィナステリド、タムスロシン。血圧136/68mmHg、起立性変化はない、その他の診察で異常はない…

20231015:NEJM レビュー:STEC HUS

20歳女性、4日前に焼肉に家族で行った。2日前から発熱、1日前から血便あり救急外来受診。診察時には発熱なし。腹部は全体的に圧痛あり。CTで全結腸型の腸管浮腫あり。血液検査では炎症反応上昇のみ。 今後のマネジメントで気をつけることは? その後 ERでは…

20231003:AMPC/CVA出荷調整!動物咬傷どうする?

NICU、ICUの勤務が終わり、10月から地方中規模病院に戻ってきました。標高1000mくらいで、ひたすら寒いです。 この6ヶ月外来をほとんどしていなかったせいか、タイミング的な問題かわかりませんが昨日薬剤師さんからオーグメンチンの出荷調整の話がありまし…

20230930:MDRPの抗生剤治療、Entended infusion therapy

長いことCovid、ARDS、肺炎などで治療していた経過の中での呼吸状態増悪、喀痰からMEPMとLVFXがR、PIPC/TAZ Iの緑膿菌が陽性となりました。抗生剤治療はどうしましょう? 今回もIDSAの治療ガイダンスを見てみましょう。 以前のAmpCについての記事はこちら tk…

20230923:NEJM レビュー:CLABSI

今週のNEJMのレビューはこちら 要点をまとめると ・CLABSIとCRBSIの違い(サーベイランス的なものと臨床的なもの) ・意識すべき感染経路4つ(Key figure) ・CRBSIリスク因子3つ ・CRBSI予防戦略 ・CovidのCLABSIへの影響 となります。 Prevention of Centr…

20230918:NEJM Case recored:Case 28-2023: A 37-Year-Old Man with a Rash

今週のNEJM case recordです。37歳男性の全身の皮疹の症例です。 Case 28-2023: A 37-Year-Old Man with a Rash Profile:37歳男性 HPI: 37歳の男性9日前まで元気であったが手足にびまん性の発疹が生じた。発疹は3日間で腕、脚から鼠径部、体幹、顔面へと拡…

20230914:Beers criteria 2023

当院の有名な言葉として「いつも心に薬と結核」という言葉があります。病気を見たらまずは薬と結核が悪さをしてないかを考えます。 上司はいつも「高齢者の体調不良を見たら薬のせいと思え」と言います。do no harmがないようにまずは考えます。 高齢者の入…

20230907:自己免疫性脳炎をAPEスコアで考えてみる

症例:70代男性、農業を普段はしている。数日前からおかしなことを言うようになっていた。受診当日から体動困難があり救急受診。ERで頭部MRI、髄液検査を実施したが、髄液でタンパクの軽度上昇のみ(51)。検査で鎮静を使用していた影響もあったのか、ERで徐…

20230905:postictal stateはどれくらい続くのか?

症例:50台女性。子宮癌指摘あるも病院受診をしていなかった。意識障害で救急搬送、血液検査で高Ca血症(補正Ca16)あり、初療中に繰り返す短時間の全身性痙攣あり。挿管管理でICU入室となった。(頭部MRI、髄液は正常) Caは治療で翌日には正常化。持続脳波…

20230901:Vibrio vulnificus感染症

(しばらく前の症例です) 50代女性、アルコール関連LCがあるが仕事もしている元気な方。受診前日まで仕事をしていたが、夜から発熱、受診当日に倦怠感が強くなり右下肢が腫脹してきたため受診。本人は意識清明だが、右下肢は紫斑となり、範囲を超えて圧痛を…

20230824:AmpCって何でしたっけ?

E .cloacaeが喀痰培養陽性となり、感受性結果から抗生剤選択でCTRXでもいいのではないかと議論になりました。 研修医の先生「今の話ってAmpCでしたっけ?」 私「そう、Serratia,Citrobacter,Enterobacterあたりで臨床的には考えることが多くて、感受性があっ…

20230823:STEC HUSの腎外症状

問題です。 1:STEC HUSの神経合併症で生じうるものはどれか? a) Seizures b) Stroke c) Coma d) All of the above 2:STEC HUSの急性期に生じる高血糖の機序は? a) Dextrose containing dialysate solutions b) Stress response of the body c) Pancrea…

20230817:NEJM Clinical Practice:Community-Acquired Pneumonia

今週のNEJMに市中肺炎のClinical Practiceがありました。コロナ流行が再び、という最近ですが、そんな時だからこそCAPの勉強をしておきましょう Community-Acquired Pneumonia N Engl J Med 2023; 389:632-641 はじめに・Community-acquired pneumonia(CAP…

20230816:S.maltophiliaに対する抗生剤治療

最近ICUで拗れた誤嚥性肺炎で広域抗菌薬を長期間使用している方の喀痰からS .maltophiliaが陽性となることが多いです。定着菌なのか、治療すべきか悩ましいことが多いですが、最近の症例では重症のため治療しようとなりました。 緑膿菌も含めた腸内細菌もカ…

20230813:ヘパリン増やしているのにAPTT伸びません

あるICUの一コマ 静脈血栓でヘパリンを開始している患者の申し送り (ivはせずに持続点滴の用量を増やして調整していた) 私「なかなかAPTT伸びなくて今ヘパリン30000U/日まで増やしてるんですよ」 指導医「なんでAPTT伸びてないの?理由は?」 私「・・・」…

20230811:JAMA network open アセトアミノフェン中毒

久しぶりにアセトアミノフェン中毒を見ました。今週たまたまJAMA network openにガイドラインが載っていたので読んでみました。Intensivist 中毒のアセトアミノフェン中毒が名著であり、今回あまり新しいことはありませんでした。 www.medsi.co.jp 以下学び…

20230801:呼吸不全に対する筋弛緩

挿管時以外の筋弛緩を使い慣れていなくて悩んでいたら、上司から筋弛緩使用の勘所を教えてもらいました。 □中等度以上のARDSに対して ・PEEPをうまく使うなどして人工呼吸器の設定を最適化する ・筋弛緩薬以外の薬剤で肺保護換気を目指す それでも肺保護がで…

20230730:ICUでの新規のAf、抗凝固する?

無症候性の新規発症の心房細動を見た時、持続していなくても、通常はCHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアで抗凝固療法の適応を考え、HAS-BLEDスコアで出血リスクを検討し、抗凝固を開始するかどうか検討します。 ただICUで働いていると、重症疾患に伴う新規発…

20230727:Lancet セミナー:梅毒(Lanceet. 2023 Jul 22;402(10398):336-346.)

(架空症例です) 以前の小児科勤務で、産婦人科との合同カンファレンスがありました。 妊婦梅毒(妊娠20週、発症不明)の患者さんが他院から紹介されていました。 治療はアモキシシリン1500mg/内服で開始されていました。 何かコメントはありますか? -----…

20230726:レビュー 敗血症に対する輸液戦略(JAMA. 2023;329(22):1967-1980.)

敗血症でICU管理中、昇圧剤もかなり使って血圧は落ち着いてきたと思ったら、急に鳴り響くアラーム、血圧が低下している。。フロートラックはデバイスの関係で使えていない。。 エコーで心収縮やIVCみたりしてあたふたしていました。 そこに指導医が近づいて…

20230722:NEJM Case record:Case 22-2023: A 59-Year-Old Woman with Hypotension and Electrocardiographic Changes

今週のNEJM case recordです。先端巨大症の女性の術中麻酔導入直後の血圧低下の症例です。 Case 22-2023: A 59-Year-Old Woman with Hypotension and Electrocardiographic Changes 先端巨大症の診断がついている59歳女性。経蝶形骨下垂体手術が予定されてい…

20230712:抜管直後の上気道閉塞 どうする?

窒息で挿管になった80歳の患者さんの抜管をしました。抜管直後は呼吸状態は安定していましたが、数分後に嗄声になり、呼吸状態が悪化、SpO2が低下しました。吸引しても喀痰はほぼ引けず、バッグバルブマスクは硬くて全然揉めません。 さてどうする? 実際の…

20230708:NEJM Clinical Problem Solving:A Bumpy Road to Diagnosis

" data-en-clipboard="true">今週のNEJM CPSです。 " data-en-clipboard="true"> A Bumpy Road to Diagnosis " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true">以下経過となります。 32歳の女性 6ヵ月前から上腹痛が徐々に悪化、その他体重減少、悪…