地方内科医の日日是好日

地方中規模病院内科医の日々の診療記録

20230930:MDRPの抗生剤治療、Entended infusion therapy

長いことCovid、ARDS、肺炎などで治療していた経過の中での呼吸状態増悪、喀痰からMEPMとLVFXがR、PIPC/TAZ Iの緑膿菌が陽性となりました。抗生剤治療はどうしましょう?

 

今回もIDSAの治療ガイダンスを見てみましょう。

 

以前のAmpCについての記事はこちら

tknk830.hatenablog.com

 

以前のマルトフィリアについての記事はこちら

tknk830.hatenablog.com

 

 

https://doi.org/10.1093/cid/ciad428

 

はじめに

MDR(Multidrug-resistant)緑膿菌(MDRP):一般的に緑膿菌に感受性があるとされるペニシリン系、セファロスポリン系、フルオロキノロン系、アミノグリコシド系、カルバペネム系のうち、少なくとも3系統以上ので1つの抗生物質に感受性のない緑膿菌と定義。2017年に米国で入院した患者において32,600例にMDRP感染が発生し、2,700人が死亡した。
※MDRPの定義は国や研究ごとに微妙に異なり、日本では「イミペネムに高度耐性」「アミカシンに中間耐性あるいは耐性」「シプロフロキサシンに耐性」の全てを満たすものをMDPRとするのが一般的であり、5類定点届出疾患として届出が必要となる。


DTR(Difficult to treat resistance)緑膿菌(DTRP)
2018年にIDSAで提唱された。ピペラシリン/タゾバクタム、セフタジジム、セフェピム、アズトレオナム、メロペネム、イミペネム/シラスタチン、シプロフロキサシン、レボフロキサシンのすべてに感受性がない緑膿菌と定義。

 

Q1: MDRP感染症の治療には、どのような抗生物質が望ましいか?
A:

・非カルバペネム系βラクタム系抗菌薬(ピペラシリン/タゾバクタム、セフタジジム、セフェピム、アズトレオナム)とカルバペネム系抗菌薬の両方に感受性を示す場合、カルバペネム系抗菌薬療法よりも非カルバペネム系βラクタム系抗菌薬を優先する。

・どのカルバペネム系抗菌薬にも感受性がなく、βラクタム系抗菌薬に感受性がある場合には、high-dose extended-infusion therapy(例:セフェピム2gを8時間ごとに少なくとも3時間かけて点滴静注)として投与することが推奨される。

・カルバペネム系抗菌薬にβラクタム系抗菌薬に感受性の緑膿菌分離株を有する重症患者や感染源管理が不十分な患者に対しては、感受性のある新規βラクタム系抗菌薬(セフトロザン/タゾバクタム、セフタジジム/アビバクタム、イミペネム/シラスタチン/レレバクタム)の使用も妥当な治療法である。ただし、貴重な抗生物質への耐性も懸念されるため、安易な使用は控える。

 

※Extended infusionの量や時間については下記table内のβラクタムの項目参照

 

Q2:DTRPによる単純性膀胱炎の治療にはどのような抗生物質が望ましいか?
A:
 ・セフトロザン/タゾバクタム、セフタジジム/アビバクタム、イミペネム/シラスタチン/レレバクタム、セフィデロコルが好ましい治療選択肢。
・トブラマイシンまたはアミカシンの単回投与が代替治療となる。

 

Q3: DTRPによる腎盂腎炎および複雑性尿路感染症の治療には、どのような抗生物質が望ましいか?

A:
セフトロザン/タゾバクタム、セフタジジム/アビバクタム、イミペネム/シラスタチン/レレバクタム、セフィデロコルが、治療選択肢として望ましい。

 

Q4: DTRPによる尿路以外の感染症の治療にはどのような抗生物質が望ましいか?

A:
・尿路外感染症の治療には、セフトロザン/タゾバクタム、セフタジジム/アビバクタム、イミペネム/シラスタチン/レレバクタムが好ましい選択肢。
・セフィデロコルは、DTRPによる尿路以外の感染症に対する代替治療の選択肢。

 

Q5:メタロβラクタマーゼ産生DTRP緑膿菌の治療に望ましい抗生物質は何か?

A:
・セフィデロコールが望ましい。

 

Q6: DTRPの治療に新規βラクタム系抗生剤を使用した場合、DTR緑膿菌分離株の耐性出現の可能性はどの程度か?
A:
・耐性菌の出現は、DTRP感染症の治療に使用されるすべてのβラクタム系抗菌薬で懸念される。セフトロザン/タゾバクタム、セフタジジム/アビバクタムが頻度が高い。

 

Q7:DTRP感染症に対する抗生剤併用療法の役割は?
A:
・セフトロザン/タゾバクタム、セフタジジム/アビバクタム、イミペネム/シラスタチン/レレバクタム、セフィデロコルに対する感受性が確認されている場合、DTRPによる感染症に対する抗生物質の併用療法は推奨されない。
・DTR緑膿菌感染症のリスクがある患者に対して、少なくとも1つの有効な薬剤の可能性を広げるための経験的抗菌薬併用療法(例:β-ラクタム系抗菌薬にトブラマイシンを追加する)は妥当だが、β-ラクタム系抗菌薬がin vitroで活性を示した後に併用療法を継続しても、β-ラクタム系抗菌薬による単剤療法と比較して何らかの追加的有益性があることを示すデータはない  。むしろ、2剤目の継続使用は、抗生物質に関連した有害事象の可能性を増加させる。

 

Q8:DTRPによる呼吸器感染症の治療における抗生剤ネブライザー療法の役割は?

A:
・推奨しない。

 

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勉強になりました。

 

DTRPについての記載が多く、特に新規βラクタム薬についての推奨が多かったですね。こちらについては、直近のHospitalistに特集がありました。またどこかでまとめられたらと思います。

www.medsi.co.jp

 

MDRPについては記載が少なかったですが印象としては、併用療法の記載がなく、Extended infusionがやはり推奨なんだなという感じです。自分は今まで併用療法を検討することが多かったですが、プラクティスを変えないとなと思いました。

 

上司からExtenede infucion therapyについて教えてもらいました。

・SSCG2021で推奨されるようになった(推奨25)

・2023の国際サーベイで約50%行われている(International survey of antibiotic dosing and monitoring in adult intensive care units | Critical Care | Full Text

・基本的には敗血症性ショックと多剤耐性感染症が主な適応疾患

・持続投与をするのは現実的ではなく、3時間以上かけて投与

 

施設によってはなかなか行われていないと思いますが、しっかり適応では検討していきたいです。

 

本症例はCFPM2gの3時間投与w8hとしました。