地方内科医の日日是好日

地方中規模病院内科医の日々の診療記録

20231015:NEJM レビュー:STEC HUS

20歳女性、4日前に焼肉に家族で行った。2日前から発熱、1日前から血便あり救急外来受診。診察時には発熱なし。腹部は全体的に圧痛あり。CTで全結腸型の腸管浮腫あり。血液検査では炎症反応上昇のみ。

 

今後のマネジメントで気をつけることは?

 

 

 

その後

ERでは整腸剤処方で帰宅。3日後に全身状態不良で再受診。

腎機能障害、血小板減少、溶血性貧血を認めHUS疑いで入院。

 

 

ということで今回はSTEC HUSです!

以前STEC HUSの腎外症状をまとめました、そちらは下記をご参照ください。

tknk830.hatenablog.com

 

 

今回は今週のNEJMのレビューがSTEC HUSでしたので、そちらをみてみましょう。

Shiga Toxin–Producing Escherichia coli and the Hemolytic–Uremic Syndrome

N Engl J Med 2023; 389:1402-1414
DOI: 10.1056/NEJMra2108739

 

最初に個人的ポイントです

血性下痢を呈するすべての小児の便培養検査、便検体が入手できない場合はスワブの使用、STECが同定された場合の毒素遺伝子型検査を行い、リスク毎にアプローチ

高リスクでは特に、HUSへの進行や重症HUSヘの進行リスクで修正可能な因子を減らす努力をする、可能なら連日採血でモニタリングし脱水の補正を行う

 

 

 

それでは本文にいきましょう!

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はじめに

Shiga toxin–producing Escherichia coli(STEC)は、志賀毒素を産生する遺伝子を持つ細菌。

 

しばしば血性下痢を生じ、血小板減少(Plt<15万)、非免疫性溶血性貧血(Hct<30%)、腎機能障害と定義される溶血性尿毒症症候群(HUS)(血栓性微小血管障害(TMA))を誘発する可能性がある。 


様々な病原体がHUSを誘発する可能性があるが、STECは世界中の小児のほとんどの症例の原因となっている。その他には、肺炎球菌やインフルエンザウイルスが含まれる。

 


TMAは、一次性または二次性に分類される。atypical HUS(一次性TMA)は、補体系の根本的な調節障害だが、二次性TMAは内皮細胞を活性化する微生物因子とそれに続く微小血管障害カスケードが引き金となる。

TMAの原因を迅速に特定することは、原因に特異的な治療を行うことができるため重要である。


atypical HUS患者における迅速な抗補体療法の使用は腎臓関連の転帰を改善するが、不当な使用は有害となりうることは留意すべきである。

 

歴史と命名

40年前、大腸菌O157:H7が血性下痢の原因として同定された。その後まもなく、HUSを発症した小児の便には、ベロ毒素を産生する様々な血清型の大腸菌O157:H7を含む)が含まれていることが報告された。


これらの毒素は、志賀毒素に対する抗血清によって中和されるため、志賀毒素と呼ばれている。(その他、verotoxin, verocytotoxin, and Shiga-like toxinなど)

 

志賀毒素1および志賀毒素2の2つの志賀毒素ファミリーは、臨床的意義が異なる。志賀毒素2を産生する血清型は、志賀毒素1を産生する血清型よりもはるかに毒性が強く、志賀毒素2も産生しない限り、HUSを引き起こすことはまれである。

 

下痢の発症から平均7日後にHUSを発症する傾向があることから、志賀毒素2を産生するSTECのサブセットは”high risk”とされる。

 

数あるhigh risk血清型の中で、大腸菌 O157:H7 が最もよく特徴付けられているのは、そのコロニーが適切な培地上にプレーティングされたときに、ソルビトールを発酵できないために無色であり容易に識別できるためでもある。

 

 

病態

志賀毒素産生はSTECの主要な病原性特性である。志賀毒素1および2は、それぞれ1個のAサブユニットと5量体のBサブユニットから構成され、5量体のBサブユニットが真核細胞に発現するスフィンゴ糖脂質であるグロボトリアオシルセラミド(Gb3)に結合することによって病気を引き起こす。

 

結合後、内在化され、ゴルジ体を経て小胞体へと逆行性に輸送される。タンパク質分解とジスルフィド結合の還元後、酵素的に活性なA1サブユニットはリボソーム大サブユニットの28s RNAを標的とし、そこで特定のアデニン残基を切断し、タンパク質合成を阻害する。

 

病原性とリスク

STEC の血清型の病原性は、主に志賀毒素 1、志賀毒素 2、またはその両方が発現しているかどうか、それぞれの志賀毒素の対立遺伝子変異体によって決定される。

 

志賀毒素 2 を産生する STEC は、通常、血性下痢を引き起こすだけでなく、下痢症関連 HUS のほとんどすべての症例を引き起こす。大腸菌 O157 はほぼ例外なく志賀毒素 2 を産生するため、常にhigh risk STEC と想定される。


志賀毒素の両方を産生するSTECもあるが、不可解なことに、病原体が志賀毒素2を産生し、志賀毒素1を産生しない場合の方がHUSのリスクが高くなる。

 

血清型ではなく、毒素の遺伝子型が重要であることは、2011年に大腸菌O104:H4が発生し、16カ国で4000人以上の感染、908人のHUS症例、50人の死亡者を出したことで実証された。

 

 

 

疫学

季節:STEC感染の発生率は夏と秋にピーク。


年齢:HUS発症のリスクが最も高い年齢は5歳未満。


株・地域:STEC血清群の割合は地域によって異なる。大腸菌O157は、世界中の有症状者の便から最もよく同定される血清群。大腸菌O26は米国ではHUS症例の3%未満だが、欧州ではHUSに最もよく関連する血清となる。


感染経路:大腸菌O157と非O157のSTECアウトブレイクの発生経路は類似しているが、食肉への暴露はO157によりよく関連している。

O-157の発生経路

O-157の発生経路

O-157と非O-157の感染経路の比較

 

診断

STEC感染の早期診断は、症例管理のために重要。

 

血便のあるすべての患者、吐血や激しい腹痛を伴う非出血性下痢のある小児では便培養検査をすべき。

 

発熱がなくても、STEC感染を否定することはできない。

 

検査室では、便中のSTECを同定するために、寒天培地での病原体の分離、免疫測定法による志賀毒素の検出、核酸増幅法による1つ以上の志賀毒素遺伝子の同定など、複数の方法を用いている。

※検査精度は下痢の発症後、日に日に低下していくため 、検査用の検体を迅速に入手し提出することで、感度が最適化される。

便が採取できない時にはスワブは代替検体として受け入れられるが、多くの検査室は便検体にこだわる。スワブの処理をワークフローに組み込むことを今後進めるべきである。

実際、STEC感染の臨床的疑いが強い場合、スワブ検体を最初に提出し、便が入手可能になったら追加で検査すべきである。

 

クリニカルコース

Low-risk
志賀毒素 1 は産生するが志賀毒素 2 は産生しない STEC による感染症の特徴を明らかにした研究はほとんどない。通常、非出血性下痢 を引き起こし、免疫不全の成人において発症する可能性がある場合を除き、HUS に至ることはほとんどない。

 

High-risk

下痢の前に腹痛、嘔吐、発熱などの非特異的な症状を示すことがあるが、通常、下痢の初日が発病の初日とされる。

 

high risk STECに曝露してから最初に便が緩くなるまでは、中央値で3日間。

 

2014年から2018年にかけて英国のNational Enhanced STEC Surveillance Systemに報告された大腸菌O157症例の分析によると、感染のほぼ2/3で、下痢が始まってから1~3日後に便に目に見える血液が混じっていた。

 

発症前24時間の便の回数の中央値は7~11回、下痢は通常、発症7日目までに軽快する。

 

排便は痛みを伴うことが多い。

 

発熱は感染した小児の30~50%で報告されているが、診察時には発熱がないことが多い。

(無熱性血便て言いますよね)

 

高リスクであることが分かっている志賀毒素(志賀毒素2が検出されている)、または高リスクが疑われるSTEC(血性下痢の患者で志賀毒素は検出されたが遺伝子型は決定されなかった)に感染したすべての小児(上記リスク分類参照)を、HUS発症の可能性がなくなるまで、または再検査でTMAの進行が認められないまで、毎日検査を行って監視することが推奨される。

 

消化器症状が改善または消失している状態で、発病5日目以降に24時間間隔で採取した検体で血小板数が少なくとも5%増加するまで続けるべき。

 

HUSを発症するhigh risk STEC感染患者の割合は多くの要因に影響されるが、大規模な小児科症例シリーズでは、通常、感染した小児の15~20%にHUSが発症し、5歳未満で最もリスクが高いことが示されている。救急外来を受診した927人のSTEC感染小児(18歳未満)を含む多国籍研究では、小児の4%がHUSを呈し、さらに14%がその後HUSを発症した。これらの所見は、1896人の感染者を対象とした17の研究のメタアナリシスの結果と一致しており、18%がHUSを発症していた。

 

HUSはほとんど常に発病5~14日目に発現するが、TMAは8~9日目までに明らかになり、無尿が起こるとしても10日目以降に始まることはまれである。

 

以下にさまざまなパターンのhigh risk STEC感染の経過を示す。

 

Uncomplicated infection:血小板数はしばしば一過性に減少するが、正常範囲内にとどまるパターン

Mild microangiopathy:血小板減少と貧血を認めるが、高窒素血症を認めないパターン。

 

Non anuric HUS:急速に進行する血小板減少に加えてヘモグロビン尿とLDH上昇し、自尿があり腎機能が改善するパターン。

 

Oligoanuric HUS:急速に進行する血小板減少に加えてヘモグロビン尿とLDH上昇し、乏尿となり腎代替が必要なパターン。

 

Oligoanuric HUS with relative hemoconcentration at HUS onset:急速に進行する血小板減少に加えてヘモグロビン尿とLDH上昇し、乏尿となり腎代替が必要で、脱水が高度なパターン。重症化リスク高い。

※乏尿は、STEC関連HUSを発症した小児の50~60%で報告されている。乏尿症の小児のほとんどは、尿量が回復するまで(通常は透析開始2週以内)腎代替療法を受けることになる。

 

HUSの合併症

STEC関連HUSの症例致死率は、小児で3%、中高年では最大20%であり、痙攣、昏睡、脳卒中などの合併症は予後不良となる。


虚血、不整脈、心筋症、心嚢液貯留などの心臓病変は、HUSの小児の10%未満で報告されている。

 

まれに、急性期に腸管壊死や穿孔などの致命的な腸管イベントが起こる。

 

その他の急性合併症には、高血圧、症候性膵炎または無症候性リパーゼ上昇、アミノトランスフェラーゼ上昇、胆汁うっ滞、ARDS、肺胞出血、、胸水貯留、インスリン依存性高血糖、DICなどがある。

 

遅発性合併症として、胆石や腸狭窄は、HUSが消失した後の1年間に一部の患者で報告されている。

 

CKDは、急性 HUS エピソードの後に生じ、最近の報告では、HUSに罹患したが腎代替療法を受けなかった小児の3分の1で慢性腎障害が示唆されている。
末期腎障害はまれであるが、高血圧、蛋白尿、GFRの低下は、STEC関連HUSの急性エピソードから数年後に現れることがある。したがって、腎臓の後遺症がないかどうか、小児期を通じて患者を監視することが賢明。

 

成人における転帰に関するデータは不足している。

 

腎外合併症のまとめは過去のブログを参照

tknk830.hatenablog.com

 

STEC関連HUSにおける補体活性化
腸内感染によって、あるいは試験管内で示されたように志賀毒素そのものによって誘導される補体活性化が、STEC関連HUSに関与している可能性がある

 

急性疾患の間、補体分解産物の増加に伴って、C3およびC4の減少が報告されている。

 

しかし、現在のデータに基づくと、STEC関連HUSのほとんどの症例において、補体調節遺伝子変異のスクリーニングは推奨されない。たとえ病因となる遺伝子変異が同定されたとしても、STEC関連HUSの小児75人を対象とした研究で報告されたように、そのような変異は重症度とは関連しない。

 

マネジメント

STEC感染が強く疑われる場合、血液塗抹標本、Hb、Hct、Plt、BUN、Cre、電解質を評価し、モニタリングすべき。
LDHの上昇も、HUSへの進行の早期 マーカーである可能性があり、その臨床的有用性はさらなる研究が必要。

 

STEC感染の可能性がある、または確認された患者には、有害な介入を避けることが重要である。

 

抗生剤
複数の研究が、高リスクSTEC感染患者における抗生物質投与とHUSのリスク増加との関連を示している。血性下痢の免疫不全患者への経験的抗生物質投与は避けることが重要である。

 

鎮痛
腹痛を和らげようとする誘惑に駆られるが、大腸菌O157感染症では、麻薬や止痢剤が血性下痢を長引かせ、HUSや神経学的合併症のリスクを高めることが観察されている。

NSAIDsは、消化管感染時に急性腎障害を引き起こす可能性があるため、避けたほうがよい。

オンダンセトロンの単回経口投与は、急性胃腸炎の小児における経口補水を促進するが、複数回の投与や静脈内投与には、追加的な利点はなく 、下痢の頻度を増加させ、QT間隔を延長させる可能性がある 。複数回の投与や静脈内投与は、ルーチンに用いるべきではない。

 

Volume expansion
HUSと最初に診断された時の相対ヘマトクリット値やヘモグロビン値が高い患者(おそらく血液濃縮を反映している)は、転帰が悪いことが示されている。このような患者は腎代替療法を受ける可能性が高く、神経学的合併症や死亡のリスクが高い。

Oligoanuric HUS with relative hemoconcentration at HUS onset

 

 

小児がhigh risk STEC病原体に感染していると疑われる場合、血液検査の結果が出るまでの間、等張輸液を静脈内に投与することは、簡単で有益な介入となりうる。

 

観察研究では、HUSが確認される前に輸液を行うことで、無尿の発生率が減少し、入院期間が短縮することが報告されている。

HUSの経過の初期に等張輸液を行うことと、輸液を制限する過去の慣行とを比較した2つの非ランダム化研究が、血管内輸液のさらなる支持を与えている。

1つの研究では、生理食塩水を輸液して、推定されるHUS発症前の体重を7~10%上回る目標体重を達成したところ、腎代替療法の頻度が減少し、長期的な後遺症が減少し、入院日数や集中治療室(ICU)滞在日数が減少した。  

別の研究では、1時間あたり1kgあたり10mlの等張晶質液を3時間かけて投与し、その後48時間にわたって維持等張液を投与した小児では、病気の経過中に腎代替療法を受ける可能性が低かった。

※これらの研究では、経静脈的volume expansionに起因する合併症は認められなかったが、体液過剰は、他の原因でAKIを起こした重症の小児の罹患率および死亡率の増加と長い間関連しており、潜在的な懸念として残っている。

 

上記の非ランダム化されている性質や、STEC感染で入院した若年成人における矛盾した所見を示した最近の研究を考慮すると、STEC感染小児患者をすべて入院させるための費用や、輸液過多に関するリスクについて、臨床試験による更なるエビデンスが必要である。

 

現状でのアプローチは、リスクのある期間が終了するまで、外来・入院どちらとしても、微小血管症および脱水が進行していないかどうか、臨床的・血清的モニタリングを毎日実施し、適宜脱水の治療を行うというところであろう。

 

代替療法
多くのケースシリーズでは、STEC関連HUS患者の50%以上が腎代替療法を受けている。

 

HUS患者における適応は、他と同様に重度の電解質異常、重度の酸塩基平衡異常、尿毒症、保存的治療に反応しない体液過多などである。

 

腹膜透析

腹膜透析は比較的安全で、効果的であり、抗凝固療法や中心静脈カテーテル留置の必要性を回避する技術であるが、合併症の可能性としては、腹膜炎、体液漏出などがある。
腹膜透析のためにカテーテル挿入を受ける小児では、腹膜炎のリスクを軽減するために、通常、予防的抗生物質が周術期に投与される。

 

血液透析

血液透析は、迅速な体液および溶質の除去が必要な場合に考慮されるべきであり、年長児や成人ではより一般的に使用されているが、合併症の可能性としては、カテーテル挿入時の血小板減少に伴う出血、カテーテルに関連した敗血症は、潜在的な合併症である。

 

 

血液透析と腹膜透析は、急性腎障害患者の生存利益に関して同等である可能性が高いため、2種類の透析の選択は、通常、患者の特性、地域の専門知識、リソースを反映している。

 

CRRT

持続的腎代替療法は、血行動態や頭蓋内圧への影響が少ないにもかかわらず、効率的に溶質を除去できるため、血行動態が不安定で多臓器不全のある小児には考慮すべきである。

しかし、抗凝固療法が必要であり、通常はICUに入院している小児にのみ実施される。

 

血液製剤カテーテル留置
STEC関連HUS患者のほとんどに、赤血球輸血が行われる。

 

HUS合併症のほとんどは血栓性傷害に関連しているため、血小板輸注は血行力学的に重大な出血のある患者に限定すべきである。

 

手術の経験とやり方にもよるが、腹膜透析カテーテルは通常、血小板輸血なしで挿入できる。

 

中心静脈カテーテル挿入前には血小板が輸血される。

(⇨実際どうなの?TTPくらい控えた方が良いの?)

 

Toxin neutratization
全身性の毒素血症がHUSに先行する可能性が高いため、STEC感染の初期段階で腸管外毒素を中和する戦略は魅力的である。 


しかし、感染した小児のうち、下痢の最初の数日間に定量可能なレベルの志賀毒素2が循環している小児は少数であり、そのような小児であっても毒素血症は短期間で終わる。

 

したがって、血管障害が起こる前に、腸管外の志賀毒素を中和する機会は限られているかもしれないが、志賀毒素2がHUSの直前または発症中に血清中、循環血球および微小小胞中で同定されていることから、腸管外志賀毒素は潜在的な治療標的として今後の研究が待たれる。

 

COMPLEMENT INHIBITION
抗C5モノクローナル抗体であるエクリズマブは、atypical HUSに非常に有効であるが、STEC HUS患者が病原性の補体遺伝子変異を有することはまれである。

 

STEC関連HUSにおける循環補体タンパクのプロファイルはしばしば異常であるが、STEC関連HUSにおけるエクリズマブの有用性は示されていない。また、STEC HUS患者から得られた腎臓生検標本では、補体を介した傷害の証拠は認められない。

 

志賀毒素誘発性微小血管症の霊長類モデルでは、補体の活性化は観察されていない。

 

終末補体経路の一部である補体成分C5は、封入細菌に対する宿主防御の重要な構成要素であり、C5を阻害するエクリズマブの使用は、髄膜炎菌やその他のNeisseria種、緑膿菌、Moraxella lacunataなど、さまざまな細菌による重篤な感染と関連している。

 

したがって、STEC関連HUSにおけるエクリズマブの使用は、臨床試験に限定すべきである。

 

血漿交換
血漿交換はTTPではADAMTS13の欠如または機能不全を是正するため有益であるが、STEC HUS患者における使用を支持するエビデンスは極めて限られている。 


方法論的にかなりの制約がある2件の小規模研究では、高齢者における血漿交換の早期使用に関連する有益性が示された。 しかし、2011年にドイツで発生したSTEC関連HUSの研究や小児科の研究では、有益性は確認されなかった。


したがって、リスクを考慮すると、血漿交換は現在推奨されていない。

 

HUSへの進行および重症HUS関連リスク因子

STEC感染⇨HUSへの進行リスク

下痢の患者に高リスクのSTEC感染が存在することを確認した後、危険因子を評価することで、HUS発症の可能性についてある程度の指針を得ることができる。

 

修正可能な危険因子としては、抗生物質、麻薬、止痢薬、脱水、相対的血液濃縮、低ナトリウム血症が含まれる。

 

修正不可能な危険因子としては、年齢(5歳未満および75歳以上でリスク)、女性、血性下痢、嘔吐、志賀毒素1の有無(ないほどリスク)、白血球数の上昇(13,000以上)、血小板数の低下(250,000未満)がある。

 

HUS⇨重症HUS進行のリスク

HUSの診断が確立された場合、同様の評価を行うことで、複雑な経過をたどる可能性を評価することができる。

 

修正可能な危険因子としては、脱水、相対的血液濃縮 、低ナトリウム血症 、低アルブミン血症がある。

 

修正不可能な危険因子として、上記tableにはないが、先行する呼吸器感染症がある。

 

血小板数

血小板減少症はHUS発症時の最初の検査値異常であるため意識することは重要である。

 

病状が比較的良好で、臨床状態も改善しつつある患者において、発病5日目以降に血小板数が安定または増加していることは、血管障害がピークに達し、間もなく改善することを示す信頼できる指標であると考えられる。

 

まとめ

STEC 感染症は、特に小児に重篤な疾患を引き起こす。

 

血性下痢を呈するすべての小児の細菌性病原体の検査、便検体が入手できない場合の検体採取のための直腸スワブの使用、STECが同定された場合の毒素遺伝子型の報告を含む診断アプローチは、ケアの重要な要素である。

 

high risk STEC感染者の綿密なモニタリング、潜在的に有害な介入の回避、循環血液量減少の防止は、合併症を回避する可能性がある。

 

特定の治療法は現状ない。転帰を改善するためには、疾患の経過を観察し、修正可能な危険因子を可能な限り軽減することが重要である。