今週のNEJM CPSです。
A Bumpy Road to Diagnosis
以下経過となります。
32歳の女性
6ヵ月前から上腹痛が徐々に悪化、その他体重減少、悪寒、寝汗、咳、断続的な呼吸困難、両手関節痛、両下肢の刺青部分に皮疹あり。
既往歴はGERDと便秘。手術歴なし。薬剤歴は腹痛のためのアセトアミノフェンのみ。アレルギーなし。ボストン在住で医療助手をしている。異性のパートナーのみ性行為あり(プロテクトあり)。タバコは13年間1/2箱/日、違法薬物なし。
造影CTでは全身のリンパ節腫脹、胸部の "galaxy sign"(無数の小さな微小結節が集蔟し、大きな結節を形成する)あり。PET-CTでは全身のリンパ節と骨、肺、皮膚の亢進あり。
右鼡径リンパ節を生検して、悪性所見はなく、非乾酪性肉芽腫を認めた。細菌、真菌、抗酸菌培養は陰性であった。
診断は?
若い女性の腹痛、発汗、意図しない体重減少を呈し、びまん性リンパ節腫脹からリンパ腫の可能性が懸念されたが、リンパ節生検で非乾酪性肉芽腫が見つかり、癌と感染が除外された
⇨サルコイドーシス
その後の経過
本文内の解説
・サルコイドーシスは臨床像、組織生検における非乾酪性肉芽腫、および肉芽腫性疾患の他の原因の除外により診断
・サルコイドーシスの臓器病変:肺(95%)、皮膚(24%)、リンパ節(15%)、眼(12%)、肝臓(12%)、その他
・米国におけるサルコイドーシスの全発生率は人口10万人あたり8人であるが、性別、年齢、人種によって大きく異なる
・診断には非乾酪性肉芽腫を示す病理と癌および感染症の除外が必要だが、例外として、Lofgren症候群(急性発熱、結節性紅斑、両側肺門リンパ節腫脹および関節周囲炎を特徴とするサルコイドーシスの亜型)またはHeerfordt症候群(uveoparotid feverとも呼ばれ、サルコイドーシスの亜型)の患者では、生検が延期されることもある
・サルコイドーシスの皮膚病変:刺青部位の皮膚病変はサルコイドーシスに特徴的であり、色素に反応して生じるため刺青を入れた後長期間経過してから発症することもある。外傷部位に病変が生じることもある(瘢痕サルコイドーシス)。その他waxy facial papulesやlupus pernio(しばしば鼻や頬にできる慢性の紫斑)がある
・PETーCTで骨や筋肉などへの無症候性病変がしばしば認められる。
・サルコイドーシスの診断後:心臓や眼など他の病変部位の評価を行う必要がある。心臓病変は不整脈に関連した死亡の主な原因である。最近のガイドラインでは、マクロファージによるビタミンDの活性化によって引き起こされるカルシウム代謝異常が腎障害や骨吸収の亢進につながる可能性があるとして、血清カルシウムスクリーニングを推奨している。
・心サルコイドーシス:主な死因となるため、心電図スクリーニングを受け、動悸、ふらつき、失神などの症状を評価すべき。心病変が懸念される場合は、ホルター心電図、心エコー検査、場合によっては心臓MRIやPETによる画像診断を追加すべき。
学んだこと(参考文献がないのは耳学問)
・サルコイドーシスの治療:症状が進行している場合や臓器障害がある場合には適応となる。第一選択薬としてグルココルチコイド、通常はプレドニゾンを1日20~40mg使用し、通常3~6ヵ月後(重要な副作用が発現した場合はそれ以前)に漸減する。ステロイドがうまく漸減できない場合は、MTX、TNFi、MMF、LEF、AZTなどを追加検討。
その他みんなで読んだ上での学び
刺青関連の皮疹
・cutaneous pseudolymphoma:様々な原因を契機に起こる良性反応性のリンパ増殖性疾患の総称
・サルコイドーシス/サルコイド反応(刺青サルコイドーシスの 1 例)
寄生虫を考える時
・寄生虫が体から出てきた時
・皮膚病変がある時(特に移動性がある)
・好酸球が増多している時
※症状がないことも特徴、思わぬ形で遭遇することも
結核の皮膚病変はしっかり取り切らないと治り切らず瘻孔として残ってしまう
⇨穿刺ではなく生検で丸ごと取った方が良い
サルコイドーシスの皮疹はなんでもありだが、ケブネル要素は一つポイント
非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫はサルコイドーシスの特徴的だが、特異的ではない
リンパ節はホルマリンにつけちゃだめ、そうすると感染症系が全滅になる
⇨内科医も必ず生検に立ち会うべき
サルコイドーシスは1/3から1/2は自然寛解する
(呼吸器ポケットマニュアル2022)
サルコイドーシスの所見まとめ
サルコイドーシスの治療アルゴリズム