地方内科医の日日是好日

地方中規模病院内科医の日々の診療記録

20230703:インフルエンザ桿菌を血液培養のGram染色でみたことありますか?

80歳HTN(アムロジピンのみ)、DM(薬なし)の既往のあるADL full、農業は趣味程度で時々している男性
数年前から年に1回ほど肺炎を起こしており、前回は1年前に喀痰からH.influenza、S .pneumoniae陽性の市中肺炎でCTRX1週間治療で退院していました。
今回数日前からの食欲不振、発熱、軽度の咳嗽で救急外来を受診されました。炎症反応は上昇しており、呼吸音は綺麗でしたが、RRは24回ほど、右肺下葉に浸潤影を認めました。喀痰は取れず、肝胆道系酵素は正常、腎機能軽度増悪(元々CKDなし)、電解質以上なし、尿検査正常であり、肺炎としてCTRXで治療を開始されました。翌日発熱は続いていましたが、咳嗽や呼吸数は改善傾向でした。そんな中で、最近検査室から電話がありました。血液培養でGNRが陽性となりました。

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あなたの解釈は?

 

自分のGram染色解釈は

・一応GNRsmallではなさそうだけど、ちょっと短い?

・少し莢膜というかムコイドっぽく見えるところもある?

典型的なムコイド型緑膿菌の見え方とは違うけど、ムコイドだと緑膿菌も太く見えるというし。。

・肺炎の診断は再考した方がようさそうだな。。

 

 

翌日培養結果が判明しHaemephilus influenzae陽性となりました。

びっくりじゃないですか?笑

まずH. influenzaeが血液培養で陽性となること自体珍しいですが、あのGram染色がH.influenzaeなのも驚きでした。

 

 

喀痰でみるH.influenzaeはGram陰性の短桿菌であり、場所によっては球菌のようにも見える。下の写真のように背景にまぎれるようにみえ、starry skyとも言われます。

https://gram-stain.com/?p=208

 

そんな経験をした最中、こんな論文が日本から出ていました!

以下、まとめです。

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左:喀痰(GPC、GPR、GNRが見える、赤矢印は小桿菌でH.influenzae疑い)
 右:血液(細長いGNRが見える)

 ・これまで血液培養におけるH. influenzaeのグラム染色所見に関する報告はない。

・血液および喀痰塗抹標本中のH. influenzaeの形態は、環境条件の違いにより異なる可能性がある。(今回は血液培養で細長いGNRが見えた)

・今回の知見は迅速な診断と治療を可能にする貴重な可能性を秘めている。

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facebookでは、あーそうだよね、1回目を疑うよねってコメントが複数ありました。

私の症例も少し長めの、腸内細菌みたいに見える形態でした。

こういった臨床でなんとなく気づいていることや違和感を論文にするのはとても大事ですね。自分もきちんと学んだことを形にして発信できるように頑張ります。