学習メモ
Skin Lesions, Foot Drop, and Hand Contractures(JAMA. Published online June 30, 2023.)
生来健康な20歳代の男性が、3ヵ月前からの右足首から全身の他の部位にかけて環状皮膚病変で皮膚科を受診した。皮膚病変部位のしびれと知覚異常、両手指の伸展障害を認めた。既往、内服なし、4年前にサモアから米国に移住してきた。
身体所見では、顔面、胸部、背部、腕、脚に複数の刺青と環状紅斑があり、両側の耳介神経と尺骨神経の肥厚、手指の変形、両側の下垂足、皮膚病変部位の温度感覚の低下を認めた。抗核抗体、リウマトイド因子の検査結果は陰性であった。背中の皮膚病変からのパンチ生検ではびまん性肉芽腫性浸潤と組織球を伴う肉芽腫性付属器周囲および血管周囲の皮膚炎が認められた。酸菌染色および抗酸菌PCR検査は陰性であった。皮膚病変の反復生検で真菌は認められず、ファイトファラコ染色でもMycobacterium lepraeは同定されなかった。
What Would You Do Next?
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Incubate skin biopsy specimen on chocolate agar
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Obtain serologic testing for M leprae phenolic glycolipid 1
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Send skin biopsy specimen to the US National Hansen’s Disease Program for PCR testing
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Treat with dapsone, rifampin, and clofazimine
Answer:C
Diafnosis:Multibacillary leprosy
ハンセン病(Leprosy)
・Mycobacterium leprae/Mycobacterium lepromatosisによる抗酸菌感染症、人工培地では発育しない細胞内寄生菌。
・感染経路:主な感染媒介者はヒトであり、米国ではアルマジロが人獣共通感染症の保菌者となっている。感染経路は呼吸器からの分泌物が最も一般的だが、刺青による皮膚汚染や垂直感染も報告されている。感染の危険因子は、最近ハンセン病と診断された患者との密接な接触、免疫抑制、免疫不全、遺伝的素因、アルマジロへの暴露など。
・鑑別診断:間質性肉芽腫性皮膚炎、環状肉芽腫、免疫不全性肉芽腫性皮膚炎、肉芽腫性薬疹、乾癬、その他の抗酸菌または真菌感染症など。
・症状:神経腫大、知覚低下を伴う皮膚病変が特徴的。leprosy reactionと呼ばれるM lepraeに対する免疫反応で、一部の患者は皮膚病変の蕁麻疹様腫脹、発熱、神経炎、結節性紅斑、運動・知覚神経機能の永続的喪失を呈する。
・検査:皮膚生検が確定診断の唯一の手段。皮膚生検で診断がつかない場合には、皮膚生検標本のPCR検査が有用(皮膚病変が5個以下(少菌型)ではSn34-80%、Sp100%皮膚病編が6個以上(多菌型)ではSn90%以上、Sp100%)。
・治療:ダプソン、リファンピン、クロファジミンの3剤併用療法を少菌型では6ヶ月、多菌型では12ヶ月が推奨される。また、リファンピン、モキシフロキサシン、ミノサイクリンを月1回、12-24ヵ月間で同等の効果、少ない副作用、アドヒアランス改善を得られるとされるが4倍高価となる。再発率は両者ともに、少菌型で1.07%、多菌型で0.77%。再発の危険因子としては、菌量が多いこと、皮膚病変が多いこと、治療期間やレジメンが不十分であること、治療アドヒアランスが悪いことなど。
その他
・2012年のFORTHの記載では、ブラジル、インドネシア、フィリピン、コンゴ民主共和国、インド、マダガスカル、モザンピーク、ネパール、タンザニアの一部地域で高い流行がある。
(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2012/09261137.html)
まとめ
・ハンセン病の流行地域での皮膚病変+末梢神経障害(特に感覚障害)でハンセン病を想起する
・皮膚生検陰性の場合にはPCRを行う
追記
・2023.7/2:膠原病科の友達が、結節性多発動脈炎のミミッカーだと教えてくれました。皮疹と神経障害ですね。PANを想起するときは、一緒に考えらようにします。