久しぶりにアセトアミノフェン中毒を見ました。今週たまたまJAMA network openにガイドラインが載っていたので読んでみました。Intensivist 中毒のアセトアミノフェン中毒が名著であり、今回あまり新しいことはありませんでした。
以下学びです。
・アセトアミノフェン急性中毒の定義が明確化:アセトアミノフェン摂取24時間以内全て
・活性炭が4時間以内で摂取量に関係なく推奨。ハイリスク群では4時間を超えていても考慮。
・アセトアミノフェン吸収遅延を起こす薬剤併用時の対応:オピオイドや抗コリン薬
・透析を考慮するタイミング:アシドーシスや意識障害がありアセトアミノフェン濃度900μg/mL以上
・100kg以上の患者の体重の設定は100kgで考える。それ以上は増量しない。(今回の症例103kgで誤差の範疇であったが、今まで意識していなかったです)
など勉強になりました。
今回NACをオレンジジュースに混ぜて飲んでもらいましたが、吐いてしました。匂いを嗅いでみましたが、やっぱりめちゃくちゃ臭いですね、便も臭くなるので病棟がすごい匂いになります。何か皆さんの意識している工夫などありますか?
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Management of Acetaminophen Poisoning in the US and Canada
はじめに
・アセトアミノフェンの毒性作用は肝細胞障害によって特徴付けられ、急性肝障害、急性肝不全、死に至る可能性がある。
・2021年、米国の毒物センターは、アセトアミノフェン製品が関与する80,000件以上の症例が診療を受けた・
・米国とカナダでは、アセトアミノフェン中毒に関する権威ある臨床診療ガイドラインは作成されておらず、今回米国とカナダのプライマリケア医と救急医のための診療ガイドラインを作成した。
アセトアミノフェン急性中毒
・まずは過量内服の病歴が正確か信頼できうるかどうかで分ける。
・急性中毒の期間は摂取から24時間以内と定義した。反復摂取の場合には24時間以上を考慮。
・肝障害を呈しうる量は単回投与では7.5g-10g以上。
・摂取後4時間以内で気道確保ができており禁忌がない限り、活性炭単回投与を考慮すべき。推奨用量は、成人で50~100g、小児で25~50g。ハイリスク群なら4時間を超えても投与を考慮。
・アセトアミノフェン血中濃度がすぐにわからない場合は、摂取量が200mg/kg超または7.5-10g超の場合、アセトアミノフェン濃度が判明する前にアセチルシステインを投与すべき。(日本では基本的にすぐにアセトアミノフェン濃度がわかることはないことは注意)
・摂取後4時間以降のアセトアミノフェン血中濃度を測定し、修正Rumack-Matthewノモグラムを利用する。オリジナルでは摂取後4時間で濃度200μg/mLから始まるが、摂取後4時間で濃度150μg/mLから始まるtreatment line(オリジナルより25%低い)ものが推奨される。treatment line以上でNACを開始する。
※摂取後2~4時間の時点で検出不可能な濃度は、毒物センターまたは毒物学者への相談が推奨される。
・摂取後4時間で濃度300μg/mLから始まる線は、肝障害を発症するリスクが高いhigh risk lineとして定義された。high risk line以上ではアセチルシステインの増量が検討されうるが、用量については根拠が不十分。(これらの議論もあくまで点滴の話)
・NACは経口または静脈内投与する。初回投与は治療の必要性が明らかになった時点で行う。15以上の異なるレジメンが同定されたが、これらのレジメンの比較有効性は評価されておらず、治療開始後20~24時間に少なくとも300mg/kgを経口または静脈内投与するレジメンが推奨された。(日本では経口製剤しかなく、基本的には初回140mg/kg、4時間ごとに70mg/kgの計17回投与となる)
・8時間以内の投与が推奨されるが、24時間以内でも投与を検討すべき。摂取後24時間以上経過していれば、患者に毒性の徴候や症状がある場合は、アセチルシステインを投与してアセトアミノフェンの濃度を待つべき。
・NACは下記の中止基準が満たされるまで投与することが推奨される。(日本では血中濃度測定が難しく、基本的には上記経口レジメンが行われる)
治療域を超えるアセトアミノフェン反復投与の対応
・24時間を超える複数回の治療域を超えたアセトアミノフェンの摂取(上記が目安)。
・アセトアミノフェン濃度が20μg/mL以上またはAST/ALTに異常がある場合は、中止基準を満たすまでアセチルシステインを投与すべき。
徐放性アセトアミノフェン製剤の過量内服の対応
・基本的には通常の対応と同様。
・アセトアミノフェン濃度の上昇など吸収が継続している証拠が存在する場合は、摂取後4時間を超えても活性炭が有用な場合がある
・摂取後4~12時間後の検体の濃度が治療ラインより低いが10μg/mLを超える場合は、最初の測定から4~6時間後に濃度を再度測定すべき。
アセトアミノフェンと抗コリン薬またはオピオイド作動薬の同時摂取
・アセトアミノフェン吸収遅延が懸念される
・摂取後4~24時間後に測定したアセトアミノフェン濃度が10μg/mL以下で、再度測定する必要はなく、NACによる治療は必要ない。
・摂取後4~24時間後に測定したアセトアミノフェン濃度が10μg/mLを超えるが、treatment line未満であれば、最初の測定から4~6時間後に再度測定を行うべき。
・NAC治療は通常と同様
100kg以上の患者
・基本的には通常と同様の管理。
・NACの投与量の計算は体重100kgを上限とする。それ以上は増量しない。
6歳未満の患者
・基本的には通常と同様の管理。
・中毒量が異なる。90mg/kgのアセトアミノフェンを単回静脈内投与された場合、または24時間の累積投与量が150mg/kg体重を超えた場合となる。
・レジメンによっては、体重41kg未満の患者には低ナトリウム血症を避けるため、NACの投与量を体重に応じて調整する必要がある。
妊婦
・基本的には通常と同様の管理。
・一部の臨床医がアセチルシステインの静脈内投与を好むが、妊娠中の患者において経口経路の効果が低いことを示すデータはない。
その他の治療
・透析:アセトアミノフェンの毒性作用によるアシドーシスまたは意識変容を伴うアセトアミノフェン濃度900μg/mL以上の患者では、アセチルシステインによる治療に加え、血液透析が推奨される。
※透析中のNAC:静脈内投与では、NACの注入速度は、少なくとも1時間当たり12.5mg/kg。経口投与は、血液透析中に調整する必要はない。
・肝移植:AST/ALTの進行性上昇または凝固異常があれば移植を考慮。NAC治療にもかかわらず脳症または多臓器を呈する患者も移植を考慮。
・ホメピゾールはエビデンス不十分。(最近注目されている)