地方内科医の日日是好日

地方中規模病院内科医の日々の診療記録

20230523:青色強膜

小児外来の一コマ

 

指導医「先生たち、今から1歳のワクチンの子供がいるけど、顔の特徴があるから何か考えてみて」

 

(ワクチン終了)

 

私「いやー全然わかりません」

1年目研修医「強膜が青かった気がします!」

私「えーそうだった?」

指導医「素晴らしい!その通り!追加で問診をとってみる、兄弟で過剰な骨折歴があるみたいなんだ!この子はまだ症状は骨折歴はないみたいだけど、要フォローだね!」

 

(外来終了後)

 

私「先生すごいねぇ、よくわかったね!全然わからなかったよ。。」

1年目研修医「みたらすぐわかりましたよ!今入院している6ヶ月の子も結膜充血なくなってきたら、強膜青い感じがしますよ!」

私「そんなみんなが青いわけじゃないんだから!」

1年目研修医「先生、6ヶ月くらいまでは普通に強膜青くてもいいみたいですよ!」

私「。。。」

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ということで、青色強膜の勉強をしてみました。

参考文献はこちら

A review of syndromes associated with blue sclera, with inclusion of malformations of the head and neck(Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol. 2018 Sep;126(3):252-263.)

 

 

青色強膜

遺伝性症候群やその他の様々な病因で起こる、コラーゲン減少に伴う強膜の菲薄化により光の透過性が亢進することで生じる(赤色光はぶどう膜に吸収されるが、青色光はぶどう膜に十分に吸収されない)。

 

健康な新生児も軽度の青色強膜を示すことがあり、通常は6ヶ月齢までに通常の強膜の肥厚が始まり、青色から青灰色の外観に変化する。

 

遺伝的要因

青色強膜を伴う遺伝的症候群が少なくとも66件。

代表的なのは骨形成不全症1型、その他Hallermann-Strieff症候群、Kabuki症候群、Laron症候群、Loeys-Dietz1型、Marshall-Smith症候群などが比較的頻繁に青色強膜を呈する。

 

骨形成不全症 - 19. 小児科 - MSDマニュアル プロフェッショナル版

骨形成不全1型による青色強膜

 

※骨形成不全1型(常染色体顕性)

https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/000862118.pdf

骨形成不全の中で最も軽症。一部の患者の症状と徴候は、青色強膜、関節の過可動性による筋骨格痛に限られる。小児期に頻回の骨折が起こる可能性がある。骨変形による骨痛、 脊柱変形による呼吸機能障害、難聴、心臓弁(大動脈弁、僧帽弁に多い)の異常による心不全が年長期以 降に生じることが多い。また骨脆弱性は成人後も継続し、妊娠・出産や加齢に関係した 悪化が知られるため、生涯に渡る管理・治療が必要である。

治療は内科的治療と外科的治療に大きく分けられ、内科的治療では骨折頻度の減少を目的としてビスフォスフォネート製剤投与が行われる。骨折頻度の減少のみならず骨密度の増加、骨痛の改善、脊体の圧迫骨折の改善などの効果も得られている。

⇨青色強膜だけで見つかることもあるよう。早期発見大事!家族歴、骨折の既往をきこう!

 

 

非遺伝的病因


最も一般的な全身性疾患は鉄欠乏性貧血。入院患者の小規模コホートにおいて、鉄欠乏性貧血に伴う青色強膜の発生率は56.3-85.1%。

その他、POEMS症候群、銀皮症、Caplan症候群高ホモシステイン血症重症筋無力症、大田母斑などで稀だが報告がある。

1980 年代の AIDS 流行初期に一部の患児が青色強膜を呈したが、それ以降報告はない。

薬剤性としては、ミノサイクリン最多で、少なくとも12例報告されている(2年以上のミノサイクリンの高用量投与後に生じることがあり、通常、爪(最多)、皮膚、口腔粘膜、骨(骨格、歯槽)、歯の色素沈着を伴うことがある。その他エゾガビン(抗てんかん薬)、 ミトキサントロン(抗がん剤)、プレドニゾロンで報告されている。

 

 

A治療前、B治療後

REDISCOVERING THE PHYSICAL EXAM| VOLUME 247, P169-170, AUGUST 2022

鉄欠乏性貧血による青色強膜

機序:コラーゲン欠損に伴う強膜の菲薄化

 

Natl Med J India. 2017 May-Jun;30(3):176.

高ホモシステイン血症(ホモシステイン尿症)に伴う青色強膜

機序:不明

 

Severe mitral regurgitation in a patient with a bluish right ...

Eur J Intern Med. 2009 Jan;20(1):e1-2.

Caplan症候群に伴う青色強膜

機序:不明

 

 

image

Br J Haematol. 2017 May;177(4):508. 

POEMS症候群に伴う青色強膜

機序:色素沈着

 

N Engl J Med 2018; 378:1537

ミノサイクリン長期使用に伴う青色強膜

機序:色素沈着

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勉強になりました。

骨形成不全の所見としては国家試験でもとても有名ですよね。また時間があれば勉強してみます。

内科やっている時は貧血(特に鉄欠乏性貧血)の所見として探していました。遺伝性疾患以外でも色々報告がありますね。ミノサイクリンはNEJMのimageが印象残っていました。まずは鉄欠乏と薬を想起ですかね。

 

ではこの辺で失礼します。