小児外来、また脚を引きずる子が来ました。今回は右股関節を痛がり、エコーで右少量、左少量の股関節液貯留を認めました。血液検査で炎症は上がっておらず、一応体重もかけられたので一過性滑膜炎として外来フォローとしました。
今回、足を引きずる小児のまとめがAFPに上がっていたのでまとめました。
Evaluating the Child With a Limp(Am Fam Physician.2023;107(5):474-485)
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幼児 (3歳未満) |
小児 (3歳~10歳) |
思春期 (11歳~19歳) |
小児期全般 |
内反足 先天性アキレス腱拘縮 予防接種副反応 下肢長不等 骨折 垂直距骨 |
ベーカー嚢胞 皮膚筋炎 ペルテス病 筋炎 足根連鎖 足根骨癒合症 |
膝蓋軟骨軟化症 過剰運動症候群 オスグッド・シュラッター病 離断性骨軟骨炎 Overuse syndrome 大腿骨頭頂部すべり症 捻挫・挫傷 腱鞘炎 腫瘍 |
打撲 股関節発育不全 足の異物 骨折 若年性特発性関節炎 ライム病性関節炎 骨髄炎 反応性関節炎 敗血症性関節炎 一過性滑膜炎 |
鑑別疾患ごとの特徴
先天性/発達性
病因 |
疫学 |
リスク、病歴 |
身体所見 |
発育性股関節形成不全 |
人口の2-4% |
出産時の骨盤位 家族歴 初産児・女児に多い 動作時股関節痛(多くは無症状) |
臀部と大腿部の皮下脂肪の非対称性 股関節の外転制限 脚長差 トレンデレンブルグテスト陽性 Galeazzi test陽性( figure 1) |
男子10万人あたり3-6人 |
筋力や運動発達に問題がなかった児が、よちよち歩きあたりから筋力低下や脚を引きずるようになる |
腓腹筋肥大 体幹と下肢近位部の筋力低下 Gowers sign |
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過活動性エーラス・ダンロス症候群または過活動性スペクトル障害 |
人口の0.1-3.4% |
活動関連の慢性痛、 進行すると倦怠感・機能性胃腸障害・感覚障害・骨盤機能障害を生じる |
関節の過伸展性または過屈曲性 皮膚の過伸展性 |
(舟状骨の血流障害性壊死) |
発生率2%未満 |
中足部痛 男児は女児に比べ5倍以上多い |
足の舟状骨内側面の圧痛 |
ペルテス病 (股関節の血流障害性壊死) |
小児10万人当たり1-11人 |
無熱 病的には見えない様子 数週間から数ヶ月かけて足を引きずり痛みが発生する 男児は女児に比べ5倍多い |
股関節の内旋・屈曲・外転で痛む Galeazzi test陽性 股関節の内旋不全(figure 2) 両側性が10-24% |
大腿骨頭すべり症 |
小児10万人あたり4.8人 |
肥満 内分泌・代謝・腎臓疾患 男児に多い |
股関節の内旋不全 股関節を曲げると外旋せざるを得なくなる 膝の可動時痛 |
感染性
病因 |
疫学 |
リスク、病歴 |
身体所見 |
淋菌性関節炎 |
性器感染率は青年期(15-19歳)で10万人あたり350-600人 関節への感染は稀 |
性行為 膣または尿道からの分泌物・排尿障害 持続痛 |
無痛性で痒みのない斑状皮疹または小水疱 片側の関節の腫脹(通常、膝、足首、足) 腱鞘炎 |
ライム病性関節炎 |
小児10万人あたり4-12%(報告不足の可能性あり) 未治療例の50%が関節炎を発症する |
マダニに刺された 水疱性発疹 3ヶ月以上前に流行地在住または旅行していた(関節病変は播種性疾患の晩期症状) |
関節腫脹(典型的には膝) 通常は体重を支えることができる |
骨髄炎 |
小児10万人あたり9人 |
発熱、亜急性症状 |
局所的な骨の圧痛・熱感・腫脹・発赤 |
敗血症性関節炎 |
年間10万人当たり4-5例 |
体重増加不良 発熱 3-5日での発症 男児は女児の2倍多い |
重症感 関節の熱感・発赤 全可動域での痛み 関節の可動域制限(股関節の場合は屈曲・外転_外旋(figure 4)) |
一過性滑膜炎 |
小児年間平均発症率0.2% 小児が少なくとも1回発症するリスクは3% |
鼡径部または大腿部の痛み 患側股関節は通常屈曲・外転・外旋している 可動域の最後に痛みがある |
炎症性
病因 |
疫学 |
リスク、病歴 |
身体所見 |
若年性特発性関節炎 |
小児10万人あたり4-400人 |
朝または長時間休息後の関節のこわばり(活動すると改善する) かすみ目・ドライアイ 倦怠感 発熱 体重減少 |
関節の発赤・腫脹・圧痛・熱感 発疹 顎関節の病変 |
反応性関節炎 |
感染後の関節炎発生率1-20% |
結膜炎 趾炎 上咽頭炎 乏関節炎 尿道炎 関節腫脹・熱感・発赤 |
病因 |
疫学 |
リスク、病歴 |
身体所見 |
骨軟骨腫 |
30歳未満の有病率0.44%、通常は10-15歳頃に発症する |
骨の塊の上に痛みや折れるような感覚がある |
大腿骨遠位部または脛骨近位部に硬く不動性な骨塊 |
類骨骨腫 |
稀だが3番目に多い良性骨腫瘍(11%) |
活動時や夜間に増悪する痛み 男児に多い NSAIDsで痛みが軽減する |
通常大腿骨・脛骨・腓骨にある触知可能なしこり |
悪性腫瘍
病因 |
疫学 |
リスク、病歴 |
身体所見 |
小児がんの中で最多 米国では年間4,000人が罹患 残りの1人が急性骨髄性白血病 |
食欲不振 安静時痛 夜間痛 体重減少 |
腹部腫瘤 骨の圧痛 肝脾腫 リンパ節腫脹 触知可能な骨腫瘤 |
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骨肉腫 |
通常、小児および若年成人に発症し、全体の発症率は年間100万人あたり4-7人 |
特に夜間の激痛 |
触知可能な腫瘤 通常は大腿骨遠位部または脛骨近位部にある |
外傷、過剰使用
病因 |
疫学 |
リスク、病歴 |
身体所見 |
足の異物・刺し傷 |
非常に多い |
何かを踏んで鋭い痛み |
足底の局所的な発赤、皮膚障害の存在 |
急性骨折 |
健康な小児の3人に1人が小児期に骨折する |
外傷 局所的な痛み
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局所的な圧痛・腫脹・発赤、骨盤や大腿骨の骨折の場合は脚長不一致 |
剥離骨折 |
正確な発生率は不明だが、比較的稀 |
走る蹴る系のスポーツをする青少年 損傷部位(多くは骨盤)に突然の弾けるような感覚を覚える |
前上または前内側腸骨棘の触診による青あざと圧痛 |
疲労骨折 |
コモン、ランナーの最大50%、バレエダンサーの22-45%に見られる |
朝のこわばり 活動時に悪化する痛み 数週間にわたる潜在性の経過 |
通常、脛骨・腓骨・中足骨に点状の圧痛 |
腸脛靭帯症候群(ランナー膝) |
ランナーの最大10% |
膝の外側 大腿部 臀部の痛み:走ったり歩いたりすると悪化し、休むと良くなる |
Ober test陽性 |
虐待 |
米国では、毎年少なくとも7人に1人の子どもが児童虐待やネグレクトを経験している |
矛盾した病歴 |
歩行困難な小児の下肢の骨折 |
オスグッド・シュラッター病 |
若年層のアスリートの10-20% |
最近の成長期 ランニングやジャンプのスポーツの参加 脛骨結節上の痛み 活動時に悪化する |
脛骨結節上の圧痛 膝を伸ばしたときの痛み |
骨端線外傷の既往 |
発生率は不明、一般的ではない |
最近の成長期 外傷の既往 |
脚長不同 |
仙腸関節の疾患 |
発生率は不明、一般的ではない |
思春期の女性アスリートの腰痛 |
Patrick test陽性(figure 5) 骨盤圧迫テスト陽性 後上腸骨棘の内側のの触診による疼痛 |
シーバー病(踵骨骨端炎) |
一般集団における発生率は不明、スポーツ医学クリニックでの診察の2-16% |
硬い木の床やクリート靴を履いてのスポーツ参加 最近の成長期 踵の痛み つま先の歩行 活動時に悪化 |
踵骨腱挿入部の圧痛と軽度の腫脹 足首の受動背屈による痛み 踵骨後部の圧迫による痛み(squeeze test) つま先立ちで悪化する(Sever sign) |
よちよち歩き骨折(脛骨の螺旋状骨折) |
小児救急部における患者1,000人あたり0.6-2.5人 |
ねじりの受傷、転倒 |
脛骨軸上の圧痛点 |
診断上の注意点
敗血症性股関節炎 vs 一過性滑膜炎 (vs ライム病 vs 反応性関節炎)
・一過性滑膜炎は、小児の足腰を悪くする最も一般的な非外傷性の原因であり、良性の自己限定性疾患、一方、股関節の敗血症性関節炎は、感染発症後数時間で股関節軟骨と大腿骨頭の血液供給に壊滅的損傷を与える。
・Kocher Criteria for Septic Arthritisは一過性の滑膜炎と敗血症性関節炎を区別するためにClinical Prediction ruleとして有用である。 発熱、体重をかけない、赤血球沈降速度が40mm/時以上、白血球数が12,000/μL(12×109/L)以上は敗血症性関節炎を示唆するも。CRPが2mg/dL(20mg/L)以上であれば、さらに敗血症性関節炎の診断が示唆される。
・未治療のライム病患者の最大50%が関節炎を発症し、通常は膝、多くはないが股関節にも発症する。敗血症性股関節炎、ライム病関節炎、一過性滑膜炎は類似しているが、ライム病は、特にニューイングランド地方、中西部地方、太平洋岸北西部のような米国の流行地域で、単関節炎で足を引きずる小児に考慮されるべき。敗血症性関節炎に比べ、ライム病性関節炎は発熱や局所の炎症を伴うことが少なく、炎症マーカーやCBCの数値も低く、診察では体重をかけることへの抵抗も少ない。
・反応性関節炎は、感染によって引き起こされる全身疾患を指し、腸管や泌尿器系の細菌感染症患者に起こる無菌性の炎症性関節病変を特徴とする。
腫瘍性疾患 vs 若年性特発性関節炎(JIA)
・発熱、倦怠感、肝脾腫、発疹などの全身症状が両疾患で認められるため、足を引きずるのはJIAや癌の初期症状である可能性があり、診断のジレンマとなる。
・白血病は、末梢血の変化が微弱かないしはない病初期に、15%から30%の症例でJIAと同様の関節痛や腫れを呈することがある。血小板数が正常値より少なく、白血球数が少なく(芽球がまだなくても)、夜間痛がある場合は、白血病を示唆し、腫瘍内科への紹介を考慮する必要があることを示しています。小児白血病は、小児および思春期のがんとして最も一般的であるが、プライマリケアや救急科ではまれで、米国では年間 約4,000 例。小児白血病の大部分(75%)は急性リンパ性白血病であり、女児よりも男児に多く見られる。まれに、足を引きずることが骨腫瘍の徴候であることがある。
・非対称性関節炎により足を引きずるのは、JIAの最も一般的なタイプである乏関節亜型の主な症状である可能性がある。 女児に多く、6歳までに発症する。膝関節が最多、次に足首。RF、ANA、HLA-B27抗原を確認する。
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勉強になりました。が、あんまり新しいことはなかったです。
Kocher Criteriaはすごい軽症では使えますが、予測因子1個でもバリデーション研究では9.5%が敗血症性関節炎になってしまい、全身状態良い場合などより悩ましくなりそうです。