地方内科医の日日是好日

地方中規模病院内科医の日々の診療記録

20230418 魚介類摂取後の繰り返す嘔吐

53歳男性。ホタテを食べた4時間後に嘔吐、下痢を数回繰り返し来院。症状は数時間で自然軽快した。アサリを食べて同様の症状が出現したこともあるが、牡蠣などの他の貝類、海産物で症状が出現したことはない。同じものを食べた人で同様の症状はなかった。特異的IgEや皮膚プリックテストは陰性で、ホタテの経口負荷試験を行ったところ、摂食後90分で嘔吐、血性下痢、血圧低下を認めた。呼吸困難や浮腫は出現しなかった。

(総合診療 Vol.32 No.4)

 

あなたの診断は?

 

1歳女児。卵黄を摂取した3時間後に急に嘔吐を3度繰り返し来院。皮疹や呼吸器症状は出現しなかった。卵関連含む特異的IgEは陰性であった。

(自験例)

 

あなたの診断は?

 

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上記は同じ疾患です。食後の消化器症状ということで、消化管の問題や、中毒、アレルギーを考えたくなりますが、特有の食物以外では症状がないということで、閉塞起点はなさそうです。中毒としては周囲に同じ症状の人がいないのは合わないですね。では食物アレルギーを考えてみましょう。

 

食物アレルギーは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を開始て声帯にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義づけられています。

発症年齢、原因食物、臨床症状、IgE依存性などで下記のように分類されます。

本症例のように消化管アレルギーの身がメインで生じるものは、「新生児・乳児消化管アレルギー」があります。

国際的にはnon-IgE mediated gastrointestinal foof allergyと表記されており、IgE

依存性の皮膚症状、呼吸器症状がないことが特徴です。メイン症状により下記の通り分類されます。

FPIES(food protein-induced enterocolitis syndrome):嘔吐・下痢

FPIP (food protein-inducedproctocolitis) :血便

FPE (food protein-induced enteropathy) :下痢、体重減少

今回の症例では、嘔吐、下痢が主な症状でした。上の3つの中でいうと、FPIESが当てはまります。ということで今日はFPIESについて少し勉強してみましょう。

 

参考文献はこちら

・総合診療 Vol.32 No.4:洛和会丸太町病院の先生方のアレルギー特集、rare diseaseからmimicsまでまとまっていて秀逸です

岡本光宏.小児科ですぐに戦えるホコとタテ:小児科素人の私の外来必携本です

J Allergy Clin Immunol. 2017 Apr;139(4):1111-1126.e4.:FPEISの国際ガイドライン

J Allergy Clin Immunol Pract.2020 Jan;8(1):24-35. :FIPESの新しいレビュー

J Allergy Clin  Immunol Pract May/June 2014:成人のFIPESのケースシリーズ

 

読み方

FPIES:エフパイス

 

1 sentence summary

消化管症状を主とする乳児期好発のIgE非介在性食物アレルギー

 

疫学

分類

・Acute

・Chronic

・Atypical

・Adult

 

Acute FPIES

 

Chronic FPIES

Atypical FPIES

 

鑑別診断

鑑別診断

検査

治療

Adult FPIES

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勉強になりました。ということで、冒頭の症例は、2例ともにFPIESの症例でした。小児科研修をしていると、比較的目にしますが、内科をしている時は意識できていませんでした。以前ヒスタミン不耐症の診断をした時に、鑑別に出てきたのが初めてでしょうか。

小児、特に新生児、乳児の消化管アレルギーは確定診断が難しいことや、食事摂取について成長に影響する、摂食制限が児・家族にストレスになることなども踏まえてマネジメントがとても重要な疾患であるため、早めの専門医紹介が必要です。成人のFPIESはまだ概念として広まっておらず、あまり知られていない、見逃されている疾患かもしれません。原因食品の回避しができることがないのが現状ですが、凡そ診断がついて病態や疾患概念を患者さんに伝えられるのと、原因不明となっている状況では患者さんの不安も異なります。IgE依存症状のない食事摂取後の消化器症状、特に魚介類摂取後では鑑別にあげるようにしましょう。

 

それではこの辺で失礼します。

 

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