AFP(American Faamily Physician)2023年4月号が刊行されており、その中で今年で12回目となりますがカナダ医師会からのPOEMs(patient-oriented evidence that matters)と認定された2022年の研究トップ20の要約が出ておりました(COVID-19以外)。長いので半分ずつみていきましょう。
の④です。
Gastroenterology
Clinical question |
Bottom-line answer |
PPIを服用している患者において、胃癌のリスクがわずかではあるが臨床的に有意に増加する(Number need to harm=1,191)。制酸療法はH2RAから始めるべきである。PPIが処方される場合は、可能な限り低用量から始め期間決める。 |
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胃食道逆流症が疑われる患者をどのように評価・管理すべきか? |
胃食道逆流症の診断と管理 米国消化器学会は、胃食道逆流症の診断と管理に関するガイドラインを更新した。本ガイドラインには、プライマリケア医にとって有用と思われるいくつかの表やアルゴリズムが含まれている。治療歴が浅く、古典的な症状があり、警告症状がない患者には、8週間の試用に成功した後、PPIを中止するよう試みるべきである。 |
IBSを管理する最善の方法は何か? |
IBSの診断と管理 イギリス消化器学会によるIBSの評価と管理についてのガイドラインが更新された。大腸内視鏡検査は、警告症状や顕微鏡的大腸炎のリスクのある患者のみに推奨される。第一選択治療は、運動と水溶性食物繊維(例:サイリウム)を徐々に増量することである。 |
9:Proton Pump Inhibitor Use Associated With an Increased Risk of Gastric Cancer(Proton pump inhibitors and risk of gastric cancer: population-based cohort study. Gut. 2022;71(1):16-24.)
Clinical question
本文のあらすじ
PPIは世界中で最も多く処方されている薬剤の1つであり、胃がんとの関連性に不確実性が残ることから、我々は、PPIで新規治療した患者さんがH2RAで新規治療した患者さんと比較して胃がんのリスクが高いかどうかを調べるために大規模な集団ベースのコホート研究を実施した。
1990年から2018年の間にPPIの新規処方を受けた110万人以上と、同期間にヒスタミン2受容体拮抗薬(H2RA)の新規処方を受けた別の22万825人の中から、胃癌に関連する家族性症候群のある人、胃癌の既往のある人、追跡期間が1年未満の人は除外し、PPI患者973,281人とH2RA患者198,306人を選別し、胃がんのハザード比と95%CIを推定するためにCox比例ハザードモデルを当てはめ、カプランマイヤー法を用いて害に必要な人数を推定した。
PPI使用者はH2RA使用者と比較して胃癌のリスクが有意に高いことが判明した(ハザード比1.45; 95% CI, 1.06-1.98; number needed to treat to harm = 2,121(5年後) 、1,191(10年後))
カプランマイヤー分析では、PPI使用期間に応じてリスクが直線的に増加することが示された。
メッセージとしては制酸療法を開始する医師は、H2RAから始めるべき、PPIを処方する場合は、可能な限り低用量からで期間を決めるべきである。
感想
NNH高い!あんまり気にしないかなと思ってしまいました。全然H2RAをうまく使えてないんですよね、そこは反省。PPIの副作用としてはその他気にしているものはCDI(抗生剤使用なくても報告がある)、顕微鏡的大腸炎、低Mg、ビタミンB12欠乏、低Caなどがあリます。
10:American College of Gastroenterology Guideline for Diagnosing and Managing GERD(ACG clinical guideline for the diagnosis and management of gastroesophageal reflux disease. Am J Gastroenterol. 2022;117(1):27-56.)
Clinical question
胃食道逆流症が疑われる患者を臨床医はどのように評価・管理すべきでか?
本文のあらすじ
2022年のアメリカ消化器学会の胃食道逆流症の診断と管理のためのガイドライン。
Recommendation
長いのでAFP的キーメッセージだけ
・一部の患者が長期間のPPI療法を必要とし、これらの患者では理論的なリスクよりも利益が上回る
・治療歴が浅く、古典的な症状があり、警告症状がない患者では、8週間で効果があればPPIを中止するように試みるべき
・最初の処方は一般的に8週間の期間に限定されるべき
・びらん性食道炎患者では、ヒスタミン受容体拮抗薬よりもPPIを使用する。
・PPIは就寝時ではなく食前30分~60分前に投与する。
警告症状
・嚥下障害
・体重減少
・吐血
・嘔吐
・貧血
感想
普段から8週でやめているので安心しました。PPI朝食後に出していて反省しました。
11:British Society of Gastroenterology Guidelines for the Management of Irritable Bowel Syndrome(British Society of Gastroenterology guidelines on the management of irritable bowel syndrome. Gut. 2021;70(7):1214-1240.)
本文のあらすじ
2021年のイギリス消化器学会の過敏性腸症候群の管理に関するガイドライン。
長いのでAFP的キーメッセージだけ
※過敏性腸症候群;少なくとも6ヶ月間の腹痛または不快感および排便習慣の変化
・大腸内視鏡検査は、警告症状がある患者または顕微鏡的大腸炎のリスクがある患者にのみ推奨する
・症状がIBSに典型的である場合、膵臓機能不全、小腸細菌過剰増殖(SIBO)、炭水化物不耐症の検査を行わない
・治療の第一選択として、運動と、不溶性食物繊維(小麦ふすまなど)ではなく水溶性食物繊維(サイリウムなど)の摂取量を徐々に増やすことを推奨する
・下痢にはロペラミド、便秘にはポリエチレングリコールを考慮する。
・プライマリケアにおける第二選択薬は、三環系抗うつ薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬
警告症状
Definite referral criteria
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40歳以上で原因不明の体重減少や腹痛がある
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50歳以上で原因不明の直腸出血がある
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60歳以上でaまたはbがある
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鉄欠乏性貧血
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排便状況の変化
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便潜血検査が陽性
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Probable referral criteria
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年齢を問わず、腹部または直腸に腫瘤がある成人
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直腸出血を伴う50歳未満の成人で、以下の説明のつかない症状や所見がある
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腹痛
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排便状況の変化
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体重減少
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鉄欠乏性貧血
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顕微鏡的大腸炎のリスク
・女性
・50歳以上
・自己免疫疾患の併存
・夜間または重度の水様性下痢
・下痢期間12ヶ月未満
・体重減少
・NSAIDs、PPIなどの薬剤使用
小麦ふすま
感想
食物繊維は水溶性で。サイリウム勧めてみる。