地方内科医の日日是好日

地方中規模病院内科医の日々の診療記録

20230510 AFP:2022年のプライマリケア医が読むべき論文20③Asthma

AFP(American Faamily Physician)2023年4月号が刊行されており、その中で今年で12回目となりますカナダ医師会からのPOEMs(patient-oriented evidence that matters)と認定された2022年の研究トップ20の要約が出ておりました(COVID-19以外)。長いので小分けにしてみていきましょう。

です。

Asthma

Clinical question

Bottom-line answer

中等度から重度の喘息患者で、長期的にICSを使用している場合、リリーバーとしてSABA(アルブテロール)ICS(ブデソニド)の合剤は、アルブテロール単独よりも有効か?

リリーバーとしては、ICSSABAの合剤が最適

リリーバーとして、SABA(アルブテロール180μg)ICS(ブデソニド160μg)の合剤の使用は、喘息増悪とステロイド全身投与必要性を著しく減少させることが示された。

中等度から重度の喘息のある黒人およびラテンアメリカ系成人において、SABAが必要なときにICS1回追加すると、通常ケアと比較して増悪が減少するか?

喘息のリリーバーとして使用するSABA1吸入ごとに、ステロイド吸入を1吸入追加する

中等度から重度の喘息患者さんには、症状があるときにSABAを使うように言うのではなく、SABAに追加してICS1回吸入してもらうようにしましょう。その際、患者さんごとに吸入の比率をカスタマイズする必要があるかもしれません。例えば、160μgのベクロメタゾンを使用している場合、SABA2吸入に対してICS1吸入しか使用しないようにする。

 

 

⑦Combination Albuterol-Budesonide Rescue Inhaler Somewhat Better Than Albuterol Alone for Preventing Severe Asthma Exacerbations (MANDALA)(Albuterol-budesonide fixed-dose combination rescue inhaler for asthma. N Engl J Med. 2022;386(22):2071-2083.)

 

Clinical question

吸入コルチコステロイドを長期服用している中等度から重度の喘息患者において、レスキュー薬としてのアルブテロールとブデソニドの合剤は、アルブテロール単独よりも有効か?

 

本文のあらすじ

喘息発作は、SABAのレスキュー療法で治療される。しかし、SABAは炎症を治療しないため、患者は重篤な増悪を起こす危険性がある。SABA(アルブテロール)とICS(ブデソニド)の合剤によるレスキュー療法が予後を改善できるかどうかは未知数である。

 

この研究は、ICSを含む維持療法を受けているコントロールされていない中等度から重度の喘息患者において、アルブテロールとブデソニドの合剤の必要に応じての使用について、アルブテロール単独と比較して安全性と有効性を評価した多国籍二重盲検ランダム化試験。

 

P:参加者は前年度に少なくとも1回の重症喘息増悪(入院、ステロイド全身投与を必要とするER受診、ステロイド全身投与をを3日以上必要とする)を起こした4歳以上の少年、成人

I:増悪時にSABA(アルブテロール90μg)+高用量ICS(ブデソニド80μg)またはSABA(アルブテロール90μg)+低用量ICS(ブデソニド40μg)を使用()

C:増悪時にSABA(アルブテロール90μg)を使用

O:重度の喘息増悪のリスク

※参加者は平均年齢は49歳で、18歳未満6%

※4歳から11歳の小児は、低用量併用群またはアルブテロール単独群にのみ割り振られた

※レスキュー使用は2プッシュ(上記投与量は1回の作動量)

※増悪の定義は、ER受診、入院、ステロイド全身投与

 

結果としては、最低24週間の追跡調査において、高用量のアルブテロールとブデソニドの併用療法は、アルブテロール単独療法と比較して、重度の喘息増悪のリスクを有意に減少させた。安全性 有害事象の発生率は、3つの試験群間で同様であった。

 

まとめると吸入グルココルチコイドを含む維持療法を受けているコントロールされていない中等度から重度の喘息患者において、SABA(アルブテロール 180 μg) と高容量ICS(ブデソニド 160 μg)を必要に応じて使用すると、アルブテロール単独と比較して重度の喘息増悪のリスクが減少し、有害事象の発生率は上昇しなかった。

 

感想

SMART療法みたいなことかと思いましたけど、SABAですもんね。日本では合剤はまだなく、ICS追加してもらうのは難しそうですが、ERでSABAを吸ってもらうときにICS混ぜたり吸ってもらうのは現実的でしょうか。自分は今までやってませんでしたが、現在の小児科では喘息入院での吸入メプチン+パルミコートの吸入を使ってます。

 

⑧Adding Extra Puffs of Steroid Inhaler When a Short-Acting Beta-Agonist Is Needed Reduces Exacerbations in Moderate to Severe Asthma(Reliever-triggered inhaled glucocorticoid in Black and Latinx adults with asthma. N Engl J Med. 2022;386(16):1505-1518. )

 

Clinical question

中等度から重度の喘息を有する黒人およびラテン系成人において、短時間作用型β作動薬吸入が必要なときにグルココルチコイド吸入を1回追加すると増悪が減少するか?

 

本文のあらすじ

この研究は中等度から重度の喘息を持つ黒人およびラテンアメリカ系成人1,201人を、リリーバーとしてSABA単独群とSABA1吸入ごとにICS(ベクロメタゾン(80μg))1吸入の併用群に無作為化した。

 

P:中等度から重度のコントロール不良の喘息を持ち、すでにICSを処方されている(ICS28%、ICS/LABA72%)黒人およびラテン系の成人

I:SABA+ICS(SABA1吸入につきICS(ベクロメタゾン80μgを1吸入、SABAがネブライザーの場合は5吸入)

C:SABA単独群

O:O:重度の喘息増悪

参加者の平均年齢は48歳、85%が女性、72%が前年に少なくとも1回の喘息増悪を経験していた

※増悪の定義はER受診、入院、ステロイド全身投与

 

結果としては、中央値15ヶ月の追跡調査において、重度の喘息増悪の年率換算率は、介入群が対照群より有意に低かった。重篤な有害事象の発生率は、両群で同等であった。

まとめると、中等度から重度の喘息を持つ黒人およびラテン系の成人において、必要に応じて行うリリーバーにICSを追加すると、重度の喘息増悪の割合が低くなることが示された。

 

感想

喘息ではシムビコートを出すことが多いです、やっぱりSMART療法が楽なので。ICS/SABA論文2本でしたが、リリーバーとしてのICS/SABAとICS/LABA(SMART療法)の比較はまだみたいなので、今後気になりますね。