地方内科医の日日是好日

地方中規模病院内科医の日々の診療記録

20240201:内科疾患で入院中のNOAf

気づいたら2月、習慣は忙しさで一瞬で崩れ去りますが、細々と続けていければと思います。

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肺炎で入院になった要介護1の高齢女性。モニターでHR110程度のAfが見つかりました。高血圧と年齢でCHADS2 2点。抗凝固しますか?

 

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急性疾患罹患時の新規発症Afについて

 

以前ICUでのNOAfについて調べました。

tknk830.hatenablog.com

 

今回はACC/AHA/ACCP/HRSからの2023年の心房細動ガイドラインが出ていのたで、その一部を見てみましょう。

 

https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2023.08.017?_ga=2.127686541.127264584.1702212699-521241369.1696199249#sectitle0550



内科疾患や心臓以外の術後患者のNOAfについて

Acute Afは、 重症患者を含め、 急性心疾患以外の病気で入院中に発見されることも多いが、 初めて診断、治療をされたAf(New onset Af:NOAf)である可能性がある。

(発生率:内科的疾患で1-46%、重症敗血症で6-22%、非心臓手術後で3-16%)

 

これは、基礎にある不整脈発生基質と急性疾患に関連した誘因が組み合わさって起こる可能性が高い。(急性疾患以外に元々素因がある。)

 

NOAfは発作性か持続性か、 症状があるかないかにかかわらず起こりうるが、 再発のリスクが高いのは間違いない。

 

管理としては、 潜在的な誘因の発見と治療、 血行動態の最適化、レート/リズムコントロール、 抗凝固療法が重要である。

レート/リズムコントロール:頻拍や房室同期不全が血行動態に及ぼす影響と、治療に耐えうる状況がどうかとのバランスを考慮しながら、個別に検討する。

抗凝固療法:CHADS2スコアなどでリスク評価し適応を判断、開始タイミングや出血リスクと急性疾患の状況次第で考慮する。

 

NOAfは、 入院の長期化や死亡率の増加とも関連していることは重要。

 

推奨

Table 2

※急性内科疾患や非心臓手術の際に心房細動を発症または発見された患者で、5年間の追跡期間中に心房細動の再発が認められたのは、42-68%および39%。

※最初の誘因の有無にかかわらず、心房細動の再発は以下のリスク増加と関連。

心不全(HR、2.74[95%CI、2.39-3.15];P<0.001)

脳卒中(HR、1.57[95%CI、1.30-1.90];P<0.001)

・死亡(HR、2.96[95%CI、2.70-3.24];P<0.001)

 

 

※新たに心房細動と診断された患者10,723例(67.9±9.9歳、女性41%)において、19%に急性心房細動の以下の前駆因子があった。
・心臓手術(22%)
・肺炎(20%)
・非心臓手術(15%)

※5年後の心房細動の再発は、前駆因子のある群では41%、ない群では52%であったが(調整HR、0.75[95%CI、0.69-0.81];P<0.001)(A)、心臓以外の手術を受けた患者や急性感染症の患者では心房細動が再発しやすい(B)

 

 

※2010年7月1日から2013年6月30日までに米国の病院に入院した心房細動と敗血症の患者38,582例を対象としたレトロスペクティブコホート研究では、13,611例(35.3%)が心房細動に対して非経口抗凝固療法を受けていた。CHA2DS2-VAScスコアは急性期脳卒中リスクの予測因子としては良好ではなく、非経口抗凝固療法は脳卒中リスクを低下させず(1.3% vs 1.4%;RR、0.94[95%CI、0.77-1.15])、臨床的に重大な出血リスクの上昇と関連していた(8.6% vs 7.2%;RR、1.21[95%CI、1.10-1.32])。脳卒中のリスクは、患者に心房細動の既往がある場合と新たに心房細動を発症した場合とで差はなかった。

※敗血症で入院し、新たに心房細動を発症した65歳以上の患者102例を対象としたレトロスペクティブコホート研究では、28%が入院後30日以内にDOACの処方を受けていた。3年間の追跡調査において、抗凝固療法と虚血性脳卒中(OR, 1.98 [95% CI, 0.29-13.47])または出血(OR, 0.96 [95% CI, 0.29-3.21])の発生率の低下との間に有意な関連は認められなかった。

 

対応のまとめ

Figure 28

 

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勉強になりました。敗血症など重症な時以外の感染症をはじめとする内科疾患や心臓以外の術後のNOAfは、一般的なAf対応と同じで良さそうですね。