地方内科医の日日是好日

地方中規模病院内科医の日々の診療記録

20230406 5最男児 繰り返す発熱、咽頭痛、頸部リンパ節腫脹

とある小児外来での一コマです。

生来健康な5歳男児、3ヶ月前から定期的に発熱、咽頭痛、頸部リンパ節主張が1週間続く状態が、4回ほど定期的にあるとのことで受診されました。本人は比較的お元気でした。39度の発熱以外はバイタル安定、咽頭の発赤は軽度、アフタなし、両側前頸部リンパ節と左後頸部リンパ節の腫大を認めました。溶連菌、アデノウイルスの迅速検査は陰性でした。1st impressionはウイルス性咽頭炎を繰り返していると考えましたが、鑑別はPFAPA syndromeでした。PFAPAについて勉強してみました。

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参考文献

World J Otorhinolaryngol Head Neck Surg. 2021 Jun 27;7(3):166-173. [PMID 34430824]

Rheumatol Int. 2019 Jun;39(6):957-970. [PMID 30798384]

自己炎症性疾患診療ガイドライン2017

岡本光宏.小児科ですぐに戦えるホコとタテ

國松淳和.外来で診る不明熱

 

1 sentence summary

periodic fever, aphthous stomatitis, pharyngitis and cervical adenitisの頭文字からPFAPAと名付けられた、発熱、咽頭炎、口腔内アフタ、頸部リンパ節腫脹を規則的に繰り返す原因不明の周期性発熱症候群

 

呼び方

twittetrで小児科医103人に対して行われたアンケートでは以下の通りとなったようです。私は「ピーファーパ」派でしたがかなりminorityだったようです。

歴史

 

疫学

岡本光宏先生は、経験上1000人に1人ほどで珍しくないと記載されています。

病因

 

臨床所見

非典型な経過としては以下のようなパターンがあります

・発作時に腹痛、関節痛、関節炎、頭痛、発疹下痢、吐き気/嘔吐などの症状を示すこともあり、その中では腹痛が最多

・成長するにつれて発作は軽くなり、発作感覚が長くなる

・発作間が2-4週の場合は1週の誤差、5-8週の場合は2週の誤差は許容される

 

診断

流行地域での遺伝子性自己炎症症候群との鑑別は難しいですが、遺伝性自己炎症症候群に対して遺伝子検査が必要かどうかはGaslini scoreが有用です

このscoreによれば、発症時の年齢が若いこと、口腔内のアフタがないこと、腹痛、胸痛、下痢があることが、遺伝子検査陽性と相関しています

 

診断の上で重要なポイントは以下となります

・発作間の成長および発達が明らかに正常であること

・発作時に家族に病気の人がいないこと

・中耳炎、溶連菌性扁桃炎、上気道感染など、発熱の他の一般的な原因がないかを評価すること、感染や腫瘍の否定のためには6回以上の発作があると良い

ステロイドの1-2回投与で発作がすぐに治まる

 

岡本光宏先生は、扁桃白苔と高CRPの割に正常なプロカルシトニンが診断のポイントであると記載されている

 

診断の上での注意点として國松淳和先生は以下を挙げており、その上で、容易に診断すべきではなく、かなり典型的なものに限った方が良いと記されています。

・非常にありふれた症状で構成されており、特異的なのは周期性に反復する点のみ

ステロイドへの良好な反応性は、十分量のステロイドを使用すると通常の扁桃炎や熱性疾患でも軽快しうる

 

治療

 

シメチジンは予防内服

・有効率は30-60%

・有効な場合は数ヶ月継続する

 

口蓋扁桃摘出は最も効果があるがSelf limitedな疾患である点に注意

・有効率は70-90%

 

成人のPFAPA

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勉強になりました。

まだ冬のシーズンで4回の発作では診断するには早計ですね。あまり遺伝性自己炎症性疾患を本気で考えたことはなかったですが、Gaslini 診断スコアはつけてみようと思いました(本症例は<1.32で陰性でした)。ベーチェット病スペクトラムで考えることも知りませんでしたが、PFAPAが将来のベーチェット病の発症に影響するのでしょうか?成人のPFAPAは実臨床では皆さんどのように考えられているのでしょうか?

 

今日はこのあたりで失礼します。