地方内科医の日日是好日

地方中規模病院内科医の日々の診療記録

20220516 AFP:2022年のプライマリケア医が読むべき論文20⑥Miscellaneous

AFP(American Faamily Physician)2023年4月号が刊行されており、その中で今年で12回目となりますがカナダ医師会からのPOEMs(patient-oriented evidence that matters)と認定された2022年の研究トップ20の要約が出ておりました(COVID-19以外)。長いので小分けにしてみていきましょう。

です。

 

Miscellaneous

Clinical question

Bottom-line answer

患者は言葉の確率と数字の確率をどのように解釈し、リスクの推定をどのように受けることを好むか?

医師がリスクを伝えるとき、多くの患者は言葉よりも数字を好む

人は言葉によって伝えられる確率を著しく過大評価する。人々は「rare」を平均して10%と訳しますが、これは薬のリスク表示に使われる場合の典型的な意図する意味の約100倍も高い。また、「common」(平均59%)の解釈は、1%から10%という一般的な定義よりも、「almost always」に近い。患者さんは、もしあなたが実際の数字を提供できるなら、それを聞くことを好む。

バレニクリン療法を12週間以上延長したり、バレニクリンとニコチンパッチ療法を併用することは、禁煙を促進する上で有益か?

禁煙のためにバレニクリン療法を12週間使用する

バレニクリンの24週間投与と12週間投与の比較で、禁煙率の向上に対する追加利益は認められなかった。また、バレニクリン+ニコチンパッチ療法とバレニクリン単剤療法との比較においても、追加効果は認められなかった。患者の性別、人種、場所、タバコ依存のレベルによる影響は受けなかった。

CBD重篤な相互作用がある薬は何か?

カンナビジオールはSSRI三環系抗うつ薬β遮断薬などの血中濃度を上昇させる可能性がある

非毒性植物性カンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)は広く利用されており、他の薬剤と相互作用する可能性がある。精神作用のある薬を処方する前に、CBDの使用について患者に尋ねることを考慮し、他の薬で予期せぬ副作用を経験したことがあるかどうかを尋ねるべきである。

成人の急性腰痛症の治療において、イブプロフェン、ケトロラック、ジクロフェナックはどれが優れるか?

急性腰痛症に対するイブプロフェン、ケトロラクジクロフェナクの治療効果は同等である

急性腰痛症で救急外来を受診した成人において、5日後の臨床的改善というprimary outcomeにおいて、イブプロフェン、ケトロラク、ジクロフェナクの間で差がないことがわかった。しかし、secondary outcomeの中にはケトロラクが有利なものもあり、ケトロラクが優れているという可能性も残されている。

軽度から中等度の尋常性ざ瘡に最適な外用療法は何か?

尋常性ざ瘡の第一選択治療における最良の選択肢

軽度から中等度のにきび患者には、アダパレン/過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン/過酸化ベンゾイル、アダパレン単独で治療を開始することをこのネットワークメタアナリシスでは示唆している。過酸化ベンゾイルの併用に耐えられない患者は、アダパレン単独によく耐える可能性が高い。

 

16:Communicating Risk With Words: One Person's "Rare" Is Another Person's "Common"(Imprecision and preferences in interpretation of verbal probabilities in health: a systematic review. J Gen Intern Med. 2021;36(12):3820-3829. )

 

Clinical question

患者は言葉の確率と数字の確率をどのように解釈し、どのようにリスクの説明を受けることを好むか?

 

本文のあらすじ

確率の提示方法とその結果の解釈を評価した33の研究のシステマティックレビュー

 

Aさんの"まれな(rare) "発生は、Bさんの "ありふれた(common) "発生であった。

ヨーロッパのガイドラインで0.1%以上0.01%未満と定義されている「rare」は、参加者では平均10%(7%-21%)と解釈されていた。1%から10%のリスクと定義した "Common "は、参加者では平均59%(34%-70.5%)と解釈されていた。

好みを尋ねた研究では、患者の大多数が、’言葉’によるリスクの推定値よりも’数字’を好んでいた。

 

感想

そりゃそうだろうと思いますが、この論文の中でさえ数字を見ると驚きました。rareが10%なんですね。意識しないといけません。ビデオレビューなどでも注意してみます。

 

 

17:No Benefit to Varenicline Beyond 12 Weeks or Combined With Nicotine Replacement Therapy for Smoking Cessation(Effects of combined varenicline with nicotine patch and of extended treatment duration on smoking cessation. A randomized clinical trial. JAMA. 2021;326(15):1485-1493.)

 

Clinical question

バレニクリンの治療を12週間以上延長することやバレニクリンとニコチンハップ療法を併用することは、禁煙を進める上で有益か?

 

本文のあらすじ

過去6ヵ月間に1日5本以上喫煙し、呼気COレベルが5ppm以上であった18歳以上の成人1,251人を4つの治療グループ((1)バレニクリン単剤12週間、(2)バレニクリン+パッチ12週間、(3)バレニクリン単剤24週間、(4)バレニクリン+パッチ24週間)にランダムに振り分け、禁煙率の比較を行なった。

バレニクリン治療(標準的な用量漸増スケジュールによる)は目標禁煙日の1週間前から、ニコチンパッチ治療(14mgパッチ1枚/日)は目標禁煙日の2週間前から開始した。

Primary outcome:自己申告による7日間の禁煙、呼気COレベルの測定により生化学的禁煙

 

52週間の追跡結果としては、約25%の患者が生化学的に禁煙が確認された基準を満たし、4つの治療グループ間で禁煙率に有意差はなかった。二次解析で、性別、人種、場所、タバコ依存度(Fagerstrom Test for Nicotine Dependenceスコアによる)などよる有意な影響は認められなかった。

Biochemically Confirmed 7-Day Point Prevalence Abstinence Rates at Weeks 23 and 52 and Prolonged Abstinence Rates by Treatment Main Effects of Medication Type and Duration

Biochemically Confirmed 7-Day Point Prevalence Abstinence Rates at Weeks 23 and 52 and Prolonged Abstinence Rates Adjusted for Site

結論としては、最初のバレニクリン処方は12週間とし、12週間を超える期間のバレニクリンの使用は、より長い治療期間を希望する一部の患者のみに適応となる。

感想

バレニクリン(チャンピックス®︎)出荷停止は現在進行形で問題となっていますね。長期の処方は不要ということを周知して大切に使っていければと思いました。


18:Cannabidiol May Increase the Blood Levels of SSRIs, Tricyclic Antidepressants, Beta-Blockers, and More(Cannabidiol interactions with medications, illicit substances, and alcohol: a comprehensive review. J Gen Intern Med. 2021;36(7):2074-2084. )

 

Clinical question

カンナビジオールと重篤な相互作用がある医薬品は何か?

 

 本文のあらすじ

カンナビジオール(CBD)の薬物相互作用を特定するために、薬物相互作用データベースを含む3つのデータベースを検索した。

※カンナビジオール:略称CBD。麻に含まれるカンナビノイドの一つ。厚生労働省 麻薬取締部によれば麻薬取締法の「大麻」には回答しないが、日本への輸入前には確認が必要  

 

CBDは脳に影響を与えるだけでなく、肝臓を含む他の臓器やシステムにも影響を与える。相互作用のリストは膨大であり、ここ重要な相互作用を持つ一般的な医薬品のみを紹介する。

 

CBDは肝酵素CYP2D6を阻害し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、三環系抗うつ薬抗精神病薬、β-ブロッカー、およびオピオイド血中濃度を上昇させる可能性がある。CBDはラモトリギン(ラミクタール)の血清濃度を上昇させますが、他の抗けいれん薬はCBDの血清濃度を低下させる。



感想

カンナビジオール、大麻かと思ったら、大麻取締法上の大麻ではないんですね

www.ncd.mhlw.go.jp

世界各国のセレブたちからは人気のようです。まだ日本では市民権を持ってないと思いますが、近い将来や海外の方などでは意識しておきたいですね。

 

19:Ibuprofen, Ketorolac, and Diclofenac Are Equivalent for the Treatment of Acute Nonradicular Low Back Pain(A randomized controlled trial of ibuprofen versus ketorolac versus diclofenac for acute, nonradicular low back pain. Acad Emerg Med. 2021;28(11):1228:1235. )

 

Clinical question

成人の急性腰痛症に対するイブプロフェン、ケトロラク、ジクロフェナクの治療効果は?

 

本文のあらすじ

ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、急性腰痛症の第一選択薬として推奨されているが、ある経口NSAIDを他の経口NSAIDよりも推奨する明確な根拠は存在しない。

 

急性腰痛で救急外来を受診した18~65歳の成人(肩甲骨下縁から臀部上縁の間の痛みで、2週以内の持続する神経症状を伴わないもの、または過去1ヶ月以内に腰への直接外傷の既往があるもの)を対象として、NSAIDsの効果を比較した。

 

患者(n=198)は、イブプロフェン(600mg、8時間ごと頓用)、ケトロラク(10mg、8時間ごと頓用)、ジクロフェナク(50mg、8時間ごと頓用)の投与をランダムに受け、有効な24項目の腰痛スコアリングツールを用いて、痛みや機能など全体的な症状を5日後に自己評価した。

 

intention-to-treat解析により、主要評価項目である疼痛および機能スコアの改善において、有意な群間差は生じなかった。

 

感想

NSAIDsのチョイスが微妙な気がします。ロキソニンで良いですよね。


20:For Mild/Moderate Acne, Adapalene + BPO, Clindamycin + BPO, and Adapalene Alone Are Most Effective, in That Order(Topical preparations for the treatment of mild-to-moderate acne vulgaris: systematic review and network meta-analysis. Br J Dermatol. 2021;185(3):512-525.)

 

Clinical question

軽度から中等度の尋常性ざ瘡患者に対して、どのような外用療法が最適か?

 

本文のあらすじ

軽症から中等症の尋常正ざ瘡(ニキビ)に効果的で忍容性の高い外用治療法を調べるためにネットワークメタアナリシスを行なった(18,089人の患者において12の外用薬または外用薬併用を評価した40の無作為化試験)。

primary outcome:患者の自己申告による中等度以上のニキビの改善、試験中止

secondary outcome:病変数の変化、治験責任医師による総合評価、QOLの変化、有害事象の総数

 

患者の自己申告による中等度以上のニキビの改善結果

1位:アダパレン+過酸化ベンゾイル(BPO):オッズ比 3.65;95% CI, 2.58-5.15

2位:クリンダマイシン+BPO:オッズ比 2.98;95% CI, 2.22-4.01

3位:アダパレン:オッズ比 2.44;95% CI, 1.66~3.60

 

有害事象による中止結果(前治療法で稀ではあったが)

1位:アダパレンBPO(オッズ比 2.93;95% CI, 1.69~5.08)

2位:BPO単独(オッズ比 1.59;95% CI, 0.98~2.57)

3位:クリンダマイシン+BPO(オッズ比率 1.44;95% CI, 0.75~2.72) 

 

感想

ニキビはあんまり勉強したことなかったですが、デュアック配合ゲル®︎(クリンダマイシン+BPO) は処方したことがありました。アダパレンBPOは皮膚刺激性があるので、十分な説明と保湿外用薬の併用が大切です。説明としては、皮膚刺激性はほぼ2週間で任用されることが重要です。アダパレンBPOはエピデュオ®︎があるみたいですね、使ってみます。